「出社が楽しい経済学」の放送『第4回 心の会計』監修者の言い訳
いま、今年一番やりたかった仕事(共著での本の執筆)が追い込み段階にあって、他にもいろいろ仕事があって、さすがに体調が崩れがちな状況です。11月下旬になれば、少しは楽になるかと期待していますが、これまでも「5月が終われば」とか「8月が終われば」とか「9月が……」「10月が……」といってきたので、さすがに精神的に参っています。どちらにしても、12月と1月は家や大学(非常勤講師としてまだ研究室を使わせてもらっています)の片付けをしないといけないので、12月になれば、いくつかの仕事を除いて強制的に仕事を中断するしかありません。だから、あと1ヵ月弱ぐらいは、何とか倒れずにがんばりたいと……正直にいえば、さっさと倒れて楽になりたい感じですが、私の場合、そういう状況ではよほど無理しても何とかなるという、哀しい習性(体質)です。
さて、番組の話。予告のなかで「合コン必勝法」とかいっていたので、それを聞くたびに「合コン必勝法なんて出てこないぞ」とつぶやいていました。ちょっと大袈裟な予告でしたね。「合コンでの失敗のひとつを防ぐ方法」ぐらいのものでした。ただし、ピーク・エンドの法則は、役に立つ話だったはずです。講演とかプレゼンテーションをする人も、この法則を覚えておくべきでしょう。
いやゆる行動経済学を題材にした回でしたが、もともと、NHKのディレクターは複数回に分けてやりたがっていて、全8回をゲーム理論と行動経済学だけでやりたかったのでした(くどいようですが、それなら監修者は他の人にしたほうがいいって、何度いったことか……)。ゲーム理論のほうは、減らしたものの複数回になりましたが、行動経済学ネタは、このあとの「勝者の呪い」の回が少し関連しているものの、基本的には、今回の1回だけにいろいろと盛り込んだかたちです。そのため、おもしろい話が続けて出てきて、よかったと思います。
春から夏にかけて、行動経済学ネタが1回だけの場合には、キーワードを「プロスペクト理論」にして「価値関数」と呼ばれるものの説明を中心にやりたいと、頑なに主張するディレクターを説得し、キーワードを「心の会計」に変えてもらいました。それでも、当然ながら、価値関数の話は入れるという話だったはずが、できあがってみたら、まったく入っていません。私が「この番組で価値関数の説明は無理」ということを何時間もかけて説得しても、まったく受け入れてもらえなかったのですが、制作にとりかかったら、無理だと気づいたみたいです。……それなら、何時間も粘らないでほしかった。この回についての打ち合わせのほとんどは無駄だったよなぁ……。というのが、今回についての強烈な印象で、他にあまり書くことがない状況です。
全体的には、よくできた回だと思います。行動経済学そのものがおもしろいからでしょう。ただし、私の2つ目の解説は、じつは異なる2つのパターンが収録されていて、ボツになったほうでは、行動経済学の使用上の注意のような話をしていました(この点でも、とにかく私にとって無駄な時間が長かった回でした)。
行動経済学に出てくる「非合理(不合理)行動のパターン」は、実験によって明らかにされるのですが、たいていは、その実験の際に合理的なほうの行動を選択した人たちも一定程度いるのです。行動経済学が説明しようとする非合理行動は、多数派の行動ではあるけれども、誰にでも当てはまるものではないということです。ですから、行動経済学に出てくる非合理行動のパターンだけを前提に経済現象を説明することには、そもそも無理があります。最近は、行動経済学の入門書がよく売れて流行していて、「従来の経済学は行動経済学に取って代わられる」と考える人もいるのでしょうが、私はそうは思いません。行動経済学は、従来の経済学を補完するものだと思います。
次回は「スクリーニング」です。私が「第2シリーズの初回はこれにすべき!」とずっと推していたキーワードです。そういったバイアスがかかっていますが、私は、次回こそがこのシリーズ最高の回だと思っています。経済学的な内容よりも、単純に、次回のドラマがすごく好きなんです(理由は、ドラマの終わり方をみれば、すぐわかると思います)。この番組の売りは、やはりSETのみなさんが演じるドラマだということが、改めて実感できます(一般の視聴者からみれば、主人公は大竹さんが演じる小山内くんなのでしょうが、経済学者の立場では、野添さんが演じる居相田係長が主人公にみえるということも、改めて実感しました)。ぜひ、お楽しみに!
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