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2008年12月

2008年12月29日 (月)

『出社が楽しい経済学』の番組放送と本のスケジュール

何度もご案内してきましたが、2009年1月から「NHK教育テレビ」で『出社が楽しい経済学』の放送が始まります。

短いドラマを中心に番組が進みますが、その出演者であるSET(スーパーエキセントリックシアター)メンバーの何人かがすでにブログに書いていたように、1222日には番組の忘年会があり、総勢約20名が参加しましたが、私も参加し、しかも、乾杯の挨拶をすることに……意外なご指名でしたので、下手な挨拶で失礼しました。

テレビ番組の情報誌には、すでに放送予定が出ていますので、再放送もふくめた1月の放送予定を書いておきます。ただし、再放送のスケジュールは、地域によって異なるかもしれませんので、ご自身でご確認ください。

なお、「中部版」の『デジタルTVガイド』(東京ニュース通信社)の2009年1月10日(土)の「地上TVプログラム」のページには、番組の紹介も出ています。

2009年1月10日(土)23:0023:30 第1回 サンクコスト

2009年1月14日(水)24:4525:17 第1回 サンクコスト(再)

2009年1月16日(金)24:1024:45 第1回 サンクコスト(再)

……この1月16日の再放送だけは「NHK総合テレビ」での放送になります(NHK教育テレビやNHK-BSの番組を紹介する「とくせん」と呼ばれる放送枠のようです)。

2009年1月17日(土)23:0023:30 第2回 機会費用

2009年1月21日(水)24:4525:15 第2回 機会費用(再)

2009年1月24日(土)23:0023:30 第3回 比較優位

2009年1月28日(水)24:4525:17 第3回 比較優位(再)

2009年1月31日(土)16:1516:45 第2回 機会費用(再)

2009年1月31日(土)23:0023:30 第4回 インセンティブ

こうしてみると、2回程度の再放送があるようです。

なお、番組の本も、放送開始に合わせて出版されます。

吉本佳生・NHK「出社が楽しい経済学」制作班編

『出社が楽しい経済学』

NHK出版、1200円+税

(全国の書店で放送初回の110日には店頭に並ぶ予定とのこと)

昨日、その見本を手にしました。イラストを多用した、160ページ足らずの本ですから、気軽に読める仕上がりになっています。

番組内容を中心に本にしていますが、本にだけ書かれている内容もいろいろとあります。また、番組はドラマが中心の構成ですが、本にはドラマそのものはふくまれていません。

本文はかなり軽めの内容ですが、もう少し専門的な解説も読みたいという読者のために、私の解説コーナー「ワンポイント経済学」もあります。この番組の企画を最初に立てたNディレクターによるコラム「番組裏話」もあり、番組をみていなくてもおもしろい内容が書かれています。

ただし、番組の中で、テレビ画面だけで理解しようとすると少しややこしい感じの表や数値例が出ているところは、本の中で、よりくわしく説明したつもりです。それでも、一般の経済学の本に比べれば、格段にやさしい内容になっています。

番組も、番組の本も、よろしくお願いいたします。

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2008年12月28日 (日)

今年を振り返る

ブログの更新がどんどん遅くなって申し訳ありません。

今年は、私のこれまで約44年の人生の中で、一番睡眠時間が少ない年だったことだけは確実で、その疲れが最後の12月に出ている感じでした。私は、本来、1日8~9時間は寝ないとダメなタイプなのですが、今年は、その半分近い日数で、4~5時間の睡眠しかとれなかったと思います。

25日から今日(28日)まで、家族でグアムに来ています。

昨年もほぼ同じ時期に来ていて、2年連続2回目。うちの子供はプール大好きなので、昼間のほとんどの時間を水の中ですごしています。さすがに疲れますが、明らかに、少し痩せました。100キロを切ったかも……といった程度の痩せ方ですが。

25日の朝から来る予定が、飛行機が飛ばずに、同日の夜に変更。でも、おかげで、夫婦ともに25日の朝までにやるべき仕事を昼すぎまでかけて終わらせてから、旅行に出ることができたので、まあいい方向に考えています。

それくらい、12月も余裕がない状況の連続でした。というか、もう少し余裕ができたはずですが、余裕がありそうになると、仕事の時間が延びる(余裕がないときには、仕事のスピードが上がる)のです……私の場合。先週も、一晩で終わらせるつもりだった仕事に、丸々2日間かけてしまいました。

それで結局、時間の余裕がなくなったのを何とかやりくりして、家族でグアムに来て、26日と27日はずっとプール。

うちの子供は、運動神経は平均より悪い。でも、私と妻が最低レベルの運動神経だから、その子供としては健闘しているほうだと思います。私は、徒競走などは、全部最下位でしたからね。

それで、うちの幼稚園・年長組の子供が、この2日で完全に泳げるようになりました。きちんと指導したわけではないので、まったくの我流で泳いでいますが、26日には、息継ぎをせずに5メートルほど泳げるようになり、27日には、息継ぎを覚えて、10メートルほど泳ぎました。ともに、うちの子供では足が立たないプールで泳ぎましたので、かなり驚き、感心しました。

自分の身長より深いプールで、つぎつぎにいろいろなことができるようになるのが楽しいらしい。それで、子供が勝手に、かなりきつそうなトレーニングをしているのをみていて、「人は、自分が好きなことなら自然に努力する」ことを痛感しました。

ということは、ほとんどの大学生は、よほど大学での勉強が嫌いなんでしょうね。子供が幼稚園に通うようになって、幼稚園の行事に行くようになると、幼稚園児と大学生をどうしても比較してしまうので、どんどん、大学生に何かを教えることがアホらしくなる。それも仕方がないことを、今回、改めて実感しました。

「大学ぐらい行っておかないと、大変なことになる」と脅し続けられて、別に大学に行く必要もない人間がやたらに大学に入る。大学なんて行かなくても、立派に働いて稼げるはずなのに……と本音では思っていても(しかも、それは正しいのに)、学歴社会という理不尽な現実があるから、根本のところでは大学の勉強が好きでない人間が、社会的な脅しに屈した形で大学に入る。

それを強く感じるようになったいまでは、来年3月末までに大学を辞めるという決断に後悔はありません(本音を言えば、1月末か2月末に辞められたら、もっとうれしいと思っています)。

私にとっては、いろいろなことがあった2008年ですが、印象に残っているのは、2007年に予想(心配)していたことが、いくつも現実になったこと。それらをすべて伝えてあった人に会うと、ついつい、「今年は予想が当たりすぎて、気持ち悪いぐらいです」とか何とか言いつつ、つい、予想的中を認めてもらおうとしてしまう。俗物すぎますね。

すみません。めったに当たらないので、こういった年ぐらいは、許してやってください。

第1に、AIGの経営破綻。200711月発売の拙著『金融商品にだまされるな!』に、実名は出しませんでしたが、少し予備知識があれば、明らかにわかるように書いたことでした。しかも、その予想を初めて話したのは、2007年の7月だったので、サブ・プライム・ローン問題が表面化する前でした。

第2に、円高。これは、国際金融の基礎知識がある人なら、誰でも予想していたことなので、あまり自慢できません(これも『金融商品にだまされるな!』にそのしくみを書きました)。

ただ、2007年の前半、まだ1ドル=120円前後の時期に、20083月までにまとめる調査報告のテーマを相談する会議で、「2008年に1ドル=120円のままである確率よりも、1ドル=100円を突破して、90円台になっている確率のほうがずっと高いし、80円台(89円とか88円とか)になっていても、私は驚きません」と発言し、大学院時代の恩師から「いくら何でも80円台はないと思うけど」と言われていましたので、実際に80円台に突入したときには、思わずガッツポーズをしてしまいました。

また、いつもいろいろと手伝ってもらっているCさん(某メガバンク勤務)から、1ドル=100円を突破して、96円になったときに、「96円になったから、ドル預金をしようと思うけど」との相談メールが来て、それに「予想はなかなか当たらないけど、もっと円高になる確率のほうが高いから、まだやめておくほうがいい」と返信していましたので、その点でも、面目が保たれました(返信の直後、92円まで行き、そのあと100円に近いところまで戻ったので、少しドキドキしていました)。

第3は、大学の巨額損失。これも、1年半前(2007年春)からずっと言い続けてきたことで、その際に「私が勤務している大学でも巨額損失が出るでしょう」とつけ加えて言うことも多かったので、ピッタリ当てたということになります。

もっとも、AIGと大学の件は、「予想していた」というよりは、「表面化してはいないけど、いろいろな状況から論理的に推理できることなので、知っていた」というのが、本当のところなので、予想が当たったというのは、たぶん言いすぎです。円高の予想的中は、先に述べたように、さほど大したことではないので、結局、3つともさほど自慢できるようなことではないですね。はい、よくわかっているのですよ、自分でも。

でも、そもそも世間を見渡してみると、「どんどん円安になるから、外貨運用をしましょう」とか、「株式投資信託を買って、おカネにも働いてもらうのがこれからの賢い生き方です」とか、言ったり書いたりしている経済評論家が、今年こんな状況になっていても、何の反省もせずに同じ主張をくり返していたりしている。一部のマスコミも、そういった人たちの過去のデタラメさは無視して、ゴミ情報の垂れ流しの共犯を続けたりする。

「経済の予想なんて、当たらないのが当然で、当たっても大したことはないし、当たらなくても仕方がない」ということでしょうね。それはそれで正しいのですが……情報の受け手としては、「純粋な予想」と「何らかの意図が背景にある予想」の区別が大切です。

今年当たった私の予想は、一応「純粋な予想」のつもりです。当たっても、私には何の利益もない予想でしたから。

他方、外貨建ての金融商品を売りつけたい(外貨建ての金融商品は利益率が高いので……)という意図や、株式投資信託を売りつけたいという意図があって、そういった機関に関係する人たちや、そこから情報を得ている人たちが発信する情報は、「何らかの意図が背景にある予想」。これに踊らされて、大損するのは、ただバカなだけですから、ご注意を!

あとは、年内に何とか、これまでいただいたコメントに対応したいと思いますが……

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2008年12月19日 (金)

小中学生の携帯電話規制の話ですが、規制しやすいところだけ規制するというやり方は勘弁してほしい

今朝のニュースを題材にしたいのですが、本論に入る前に、別の今日のネタを少し。

朝日新聞の朝刊トップ記事に、また、南山大学(南山学園)の巨額損失の話が出ていました。駒沢大学の話のついでですが、慶応大学も出ていないし、立正大学も出ていないのに、南山大学と愛知大学の名前が出ている。

マスコミ出身の先生が「ちょっと意地悪されている感じだけど、問題が表面化したときの新聞取材への応対が、よっぽど悪かったんだろうね」とのこと。うーん、事実はどうかはわかりませんが、それなりに納得。

それで、夕方、大学の教務課に期末試験の問題を提出しに行ったときのこと。エレベーターに乗ると、5060歳ぐらいの女性3人が一緒に乗ってきた。1階から乗って、その人たちは2階で降りたのですが、その短い間のエレベーター内での、その女性たちの会話。

「この建物新しいけど、何の建物?」

「知らないわ」

「私も知らない」

「いつも、来るたびに新しい建物が建ってるけど、大丈夫かしら。この間、巨額損失の話が出てたわよね」

「そうそう。投資なんかしてたのね」

「投資はするわよねぇ(ため息)」

その直後、エレベーターを降りて行きました。うーん。大学内で、しかも大学の関係者も一緒に乗っているとわかっているはずのエレベーターで、部外者に大きな声で心配されているようでは……

もうひとつ。15日に書いたことに補足。

学生の就職活動にかかる交通費については、今日、大学の就職委員会の委員長をされている先生に、ひとつお願いをしておきました。

まず、いまの4年生に協力してもらって、就職活動にいくらの交通費がかかったかの調査をすることを提案しました。これは最低限やってほしいのですが……

本当はさらに、東京や大阪に自費でひんぱんに行って就職活動をする学生を、金銭的に支援する制度をつくってほしい(これも一応、検討をお願いしましたが……)。

多くの大学がほとんど無意味な広報活動に巨額のおカネを投じていたりしますが、広報活動などにムダなおカネを遣うぐらいなら、学生の就職活動の支援ぐらいできるはず。しかも、学生が就職活動で東京や大阪の企業を回ることは、地方(田舎?)の大学の広報活動としてかなり有効でしょう。

交通費の一部を援助してもいいし、金融機関と組んで、就職活動の目的でローンを借りられるようにしたうえで、金利負担を大学が肩代わりして、しかも保証人としての役割を担う、といった方法もあるはず。

それで、そうした支援を受けた学生には、就職後、OB・OGとして学内のセミナーなどを手伝ってもらう(本当にいい学生なら、絶対に喜んで手伝ってくれるでしょう)。

こんな感じの制度を早く導入して、アピールすれば、マスコミが好意的に取り上げてくれて、最高の広報活動になる可能性も高い。

どうして、そういう簡単な話(疲れ果てて酒を飲みながらブログを書いている酔っぱらいでも思いつく程度の簡単な話)が、頭がすごくいいはずの先生方(ご立派な教授たちや理事たち)にわからないのか、とても不思議ですよね。

さて本題(本題のほうが短くなりそうですが……)。

今朝のニュースにありましたが、「小中学生が携帯電話を持つことを、原則として規制(禁止)する」という話が出ているようですね。

ナ、ナ、ナ、ナンセンス!

※これは2009年1月10日放送開始の『出社が楽しい経済学』のドラマに必ず出てくるセリフです。内輪ネタですみません。

携帯電話使用の問題は、たとえば、

1.授業中などのメール使用の問題

2.携帯電話サイトの有害サイトや学校裏サイトの問題

があると思います。

これらの問題を本気で解決するためにきちんと考えたうえで、一連の措置の中で、携帯電話の規制をするという話なら、まだ許せるのですが、ニュースを聞いた感じでは、単に「携帯電話の規制だけすればいい」といった安易な発想で規制をしようとしているようですから、問題を悪化させるだけに思えます。

まず、児童・生徒が授業中に携帯メールをしているとしたら、それは、授業を聞く気がないことが問題の本質で、携帯電話を禁止しても、他の方法でサボるだけ。

そういった問題がより一層深刻な大学の教員の感覚では、授業中にペチャクチャしゃべられたり、食事をしたりされる(実際に、授業中にこの2つを平然とおこなう大学生は本当に多いので……)よりは、携帯メールを送り合ってもらうほうが、他の学生への迷惑は小さい。だから、私語厳禁として厳しい態度をとる教員でも、学生の携帯メールは気にしていないことが多い。それが大学の実情ではないかと思います(残念ですが、過半数の学生が、本来は大学に進学すべきではなかった学生であるような大学で教えていると、そういった感覚になります)。

話を戻しますが、授業中なのに児童・生徒が平然と携帯電話を使用してしまう状況は、子供が携帯電話を持っているかどうかの問題ではありません。携帯電話がなくても、授業運営が崩壊している。そう思いませんか?

また、携帯電話サイトの問題は、携帯電話の使用を禁止すれば、パソコンのサイトに問題が移るだけ。しかもその際には、サイト上のイジメの問題では、個人で自由にパソコンを使える裕福な家庭の子供が有利になり、パソコンが持てない貧乏な家の子供がいじめられやすくなる(裕福な親が、これを意図して規制を提言しているのなら、それはそれで合理的なのかもしれませんが……)。

また、携帯電話なら、親が子供の利用状況をチェックできます(料金明細をみればいいのです)が、パソコンのインターネット利用状況はごまかしやすいので、チェックが困難だと考えるべきです。他にも問題はいろいろ。

とにかく、携帯電話の規制を考えるときには、パソコンでのインターネット利用などの代替的な方法についても一緒に考えないと、安易な規制が問題をより深刻にする危険性があります。

今朝のニュースでは「小中学生に携帯電話は不要」という言葉が何度か出てきましたが、厳しい言い方をすれば、そういうことを安易に言う役人や政治家や審議会のほうが、よっぽど「不要」です。

携帯電話にはマイナス面があるとしても、一方で便利な面もありますが、バカな規制を安易に導入しようとする人たちには、マイナス面しかありませんから。

今回も、酔っぱらいのバカたれ(数ヵ月後にはフリーターになる予定の落ちこぼれ大学教員)の戯言をお読みいただいたことに、深く感謝いたします。

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2008年12月15日 (月)

学生の就職活動における地域格差は深刻化している

一番忙しい時期が終わったところで、疲れがじわじわと実感されたため、ついブログの更新をサボっていました。申し訳ございません。

私は、体調が悪いほど「休んだら飯が食えない」と考えるタイプ、ある意味では貧乏性なので(仕事を休んで体調を整えようといった精神的なゆとりがないので)、忙しいときには無理が利くのですが、その忙しさがやや落ち着くと、急に疲れを実感してしまいます。

それで先週の1週間は、予定されていた用事をこなしていたら、すぐに終わってしまった感じです。体調はほぼ回復しました。

以前出した「練習問題」にお答えいただいた方へのコメントは、数日中に書くつもりですので、あと少しだけお待ちください。

2日前の土曜に子供の幼稚園の劇発表会をみて、週末を広島ですごしたあと、朝から新幹線に乗っています(これも新幹線の中で書いています)が、いつもとちがって、大阪で降りる予定です。

難波のヤマダ電機に行ってから、大学院(博士後期課程)の同級生が勤めている四天王寺大学に行って、講義をします。

大阪といえば、先週の木曜の3年生のゼミ(経済演習)の時間に、ひとりの学生が欠席し、大阪で就職活動をしていました。その夜のゼミコンパには出席していたのですが、名古屋などの東海地域の学校に通いながら全国規模の大企業を就職活動で回りたいという学生にとって、3年生の秋から大阪や東京に行くのは当然のことのようです。

東海地域からは数名の学生しか採用しないという大企業も多く、そうなれば、名古屋などでセミナーや面接をやってくれないのも仕方がないことでしょう。

昔は、もっと多くの企業が名古屋でも面接をしてくれていましたが、就職(企業からみれば、採用)活動の期間が長期化しましたので、名古屋をふくめた「地方」で何回も面接をおこなうことが、予算や人員の面で無理になったのでしょう。大部分を東京と大阪でおこなう企業が多くなりました。

学生から「1回目の面接を受けるにも、東京か大阪に行く必要がある」という声をよく聞きます。もちろん、そういった面接に行くのにかかる交通費は、ほとんどの場合、学生の自己負担になります。

20数年前、私が名古屋で就職活動をしていたころは、せいぜい最終面接だけが東京・大阪という企業が多く、最終面接の交通費は企業が出してくれました。私が自費で東京に行ったのは、日本銀行の面接だけでしたが、自費で行ったのに、まともな面接はしてくれずに、私のゼミの先生が書いた本の悪口だけをずっと言われ、最後になって「つぎは名古屋で面接を」と言われましたが、そのあとは行きませんでした。

話が脱線しましたが、現在も業界によって差があり、名古屋でほとんどの面接を受けられる大企業もなくはありません。代表的なのが、ここ数年大量に学生を採用していたメガバンクです。

とはいえ、別の3年のゼミ学生が、今月上旬にメガバンクのインターンシップに参加していましたが、約1週間、朝8時から夜10時までやっていたそうで、その間、大学には一切通えないことが当然の前提になっていることが、すごい。大学の教育なんて、まったく無視という姿勢が……

私たちのころは、就職活動よりゼミなどを優先するのは当然のことで、採用側でリクルーターをしているときも、そう思っていました。学生のときは「その時間はゼミがあります」と言って、面接の時間を変えてもらっていましたし、リクルーターのときには、「ゼミを休んででも面接を受けます」と話す学生がいれば、かなり低く評価していました。

隔世の感がありますね。

まあ、学業よりも就職活動が優先されるのには、大学教育側の問題も多いので、企業や学生にお説教をするつもりなどありません。むしろ、この問題では大学側が一番悪いと思っています。

誰が悪いかはさておき、いま深刻なのは、就職活動をする学生の地域格差です。名古屋の大学に通う学生が、全国規模の企業を中心に就職活動をしようとすると、昨年までや今年の春のように、かなり順調に就職活動ができたときでも、たとえば50万円程度の交通費がかかったという話を、学生から聞きます。

しかも、景気の急速な悪化で、就職活動が長引く学生の比率は高まりそうです。そうなると、東京・大阪の大学に通う学生に比べて、地方(この問題では、名古屋もこの分類にふくまれる)の大学に通う学生は、経済的に圧倒的に不利になります。

企業はコストを削減したいので、学生が名古屋で面接を受けられる機会は平均的には減りそうですし、そもそも、採用予定数が大幅に減る。他方で、優秀な学生の取り合いは続くので、やたらに長期化した就職活動の期間が短くなるとは考えにくい。アルバイトの時給が下がったり、親の所得が下がったりといった問題も生じやすい。

とにかく、地方の学生は、就職活動のうえですごく不利になっています。はっきり言えば、地方では、金銭的に豊かでない学生は、大企業に就職するための活動すらできない状況になっているのです。

就職活動の長期化・早期化(3年の秋開始は当然で、ひどければ3年の夏から始まること)については、学業との関係で批判する声をよく聞きますが、それより、地域格差の観点から問題視すべきでしょう。

昔のように、就職(採用)活動は4年生の夏から開始ということにして、企業側で浮くコストや人員を、地方での面接に回すといった解決策が求められる、と私は考えています。

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2008年12月 8日 (月)

引っかかった若者を本気で救いたければ、「加害者になり損なった被害者」と報道してほしい

今朝のNHKのニュースで、消費者金融のカードをつくるだけでおカネ(たとえば5万円)がもらえるというアルバイトをした若者が、結局は多額の借金を負わされてしまうという話を特集していました。

勧誘した人間がそのカードで限度一杯の借金をして、そのおカネを持って逃げてしまうのですが、しばらくは返済をしているため、問題がすぐには発覚せず、おいしいアルバイトだと思った若者が口コミで友人を勧誘し、引っかかる若者が増えたとのこと。

もちろん、若者たちは「自分たちが借金を返す必要はまったくない」と説明されていて、それを信じていたので、ただ単に最初の報酬(たとえば5万円)ぶんだけ儲かるアルバイト、と信じていたわけです。

NHKのニュースでは、これに引っかかった若者のことを、終始「被害者」と呼んでおり、弁護団が「その若者たちは被害者だからという理由で、消費者金融側に金利の引き下げなどを求めている」といった趣旨の説明もありました。

私は、今回のニュースが十分に社会的に意義がある報道であったことを評価しています。そのうえで、さらにもう少し改善してもらいたいことがありましたので、ここに書きます。

この報道には、もし本当にこういった犯罪を防止したいのであれば、絶対に説明しておくべきことが抜けていました(それがわかっていても、そういった説明をしにくい事情は十分に斟酌できますので、やや無理なお願いをしていることも十分に承知しています)。

自分では一切借金の返済をしないつもりで消費者金融のカードをつくって、それを他人に渡してしまうのは、立派な犯罪だという点です。

もし本当に、他人が借金をして、その他人が返済もするのだとして、その際に自分のカードを使わせるのは、消費者金融の審査をごまかす行為に手を貸しているわけで、何らかの試験を替え玉となって受験するようなものです。替え玉受験なら、誰かの代わりに受験した人こそが犯罪者として報じられます(つい最近もありましたね)。

厳しい言い方をすれば、引っかかった若者は「加害者(共犯者)になり損なった被害者」です。

批判を覚悟でこのように書くのは、こういった報道では、この点を強調しないと、つぎの被害を防ぎにくいことが明らかだからです。

あとに述べるように、引っかかった若者を救うためにも、そして、別の若者が引っかかるのを防ぐためにも、「加害者(共犯者)になり損なった被害者」という認識は大切だと考えられます。誤解しないでいただきたいのですが、「加害者(共犯者)だから救わなくていい」などと主張するつもりは決してないのです。

だって、大人の男性から5万円をもらって援助交際をする少女に、援助交際をやめさせようとするときには、少女のほうにも「それは悪いことだから、やめなさい!」と言いますよね。それと同じようなものです。

以上の論理からすれば、消費者金融に対して「若者は被害者だから金利を下げてくれ」と要求するのは、明らかにまちがいです(あとに述べるように、要求していることではなく、根拠にまちがいがあると考えられます)。

消費者金融側にも問題がある可能性がありますから、その点を理由に、返済を軽減する交渉をすべきだとは思いますし、実際に、弁護団はそういった交渉をしているのかもしれません。

私がおかしいと感じたのは、ニュースが「若者は被害者だから」という論理だけを紹介した点です(これも仕方がないことはわかっているのですが)。

自分では借金をしないつもりで、つくったカードは他人に渡すつもりで、消費者金融の審査を受けてカードをつくるのは、明らかに「審査をごまかす意図があった」と考えるべき行為です。

私も、感情的には消費者金融は好きではないので(私が金融機関全般を敵に回して批判していることは、拙著などをお読みいただければ明らかだと思いますが)、消費者金融側の肩を持ちたくはないのですが、論理的には、今朝のニュースでの解説が最初の段階でのつぎの構図に触れていないのは、バランスを欠いています。

最初(カードをつくって、それを他人に渡して、その他人が借金をするまで)の段階では、「被害者」は消費者金融のほうで、若者は加害者側の「共犯」です。

だから、本当は信用度の低い人間が借りていた借金なのに、それより信用度が高い若者が借りることを前提にした金利になっていたとすれば、消費者金融側が「より危ない借金だとわかったから、より高い金利を適用したい」と要求するとしても、それは理にかなったことです。

ただし、論理的には上記のことが正しいとしても、感情的に納得できないとの気持ちはよくわかります。また、結果として、引っかかった若者は損失を被り、被害者になっています。私が「加害者になり損なった被害者」と表現したのは、こういった理由からです。

でも、引っかかって結果的に被害者になった若者を本当に救いたいのなら、まず正しい事実認識をしたうえで、説得力のある救済の論理を考えるべきです。それが弁護や報道の専門家の力量ではないかと……

私が、弁護側や報道側の人間として、引っかかった若者を救いたいのなら、まったく別の論理を強調するでしょう。

他人に頼まれて安易にカードをつくって他人に渡すという行為は、かなり前から蔓延しています。その結果として、安易につくった人が自分では借りていない借金を負わされるというのも、お決まりのパターンです。

しかも、審査の際に消費者金融側がそれに薄々気がついているときでも、きっと、消費者金融側はカードをつくってしまうのではないかと想像できます。無理をしてでも貸出を伸ばしたいからです。その辺りは、きちんと取材すれば、いくらでも証拠が出てきたと思われます。

今朝のニュースでは、こういった犯罪が拡がる原因をいくつか説明していて、すごくわかりやすかったのですが、あとひとつ、「消費者金融側にも原因(問題)があった」のでなければ、これほど拡がったりしないという視点が、残念ながら欠けていました。

たとえば、「他人にカードを渡すと犯罪になるから、それで自分が借りていない借金を返せと言われても、誰も助けてくれないよ」といったことを、カードをつくる段階で消費者金融側がきちんと説明しておくべきだったのに、それが不十分だった可能性はかなり高い。

この点を指摘して、引っかかった若者の返済義務を軽減する交渉はすべきでしょう。

また、被害者としての消費者金融側を完全に救済してしまう(カードをつくった本人に全額返済の義務を負わせる)と、消費者金融側にはこういった犯罪を防ぐインセンティブ(誘因)が働かないという点は、重要な問題点です。

だから、犯罪防止の観点から、こういったケースでは、消費者金融側にも一定の負担をしてもらい(そのぶん、引っかかった若者の返済を軽減してもらい)、それによって、消費者金融側にもこの犯罪を未然に防ぐ努力をしてもらうという、制度的なしくみが必要だという話なら、私も納得できます。

結局、感情的には嫌なことでも、「引っかかった若者も犯罪者(共犯)」で「被害者は消費者金融」という前提をきちんと認識して、そのうえで、立場上は「若者=弱者」で「消費者金融=強者」なのだから、何とか若者のほうを救ってあげたいという話をすべきなのです。

そして、その覚悟がない報道は、むしろ犯罪を助長する危険性があります。援助交際で5万円をもらえば非難されるけど、消費者金融の審査でウソをついてカードをつくって5万円をもらっても、犯罪の加害者とは言われず、むしろ、それで少しでも被害があれば同情される、というメッセージとして受け取る若者も、残念ながら、少なからずいるでしょうから。

本気でこの手の犯罪を防止したいのなら、もっと覚悟をもって、事実認識は論理的にすべきです。

多くの経済学者が好む表現として、偉大な経済学者であるアルフレッド・マーシャルのつぎの言葉があります。

「冷静な頭脳と温かい心(cool head, warm heart)」

今回のような問題では、まさに、「冷たいと非難されそうなぐらい冷静な論理」をきちんと示したうえで、「温かい心」で解決を考えるという姿勢が求められます。

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大学の資産運用損失は、本当は発表の何倍ものダメージであることが多い

何気なくYahoo!の経済ニュースをみたら、

「南山学園が運用で34億円損失」

と出ていました。

私が3月まで所属する大学のことですね。学内でも発表があったわけではなく、驚いた教職員も多いと思います。もっとも、私の場合は、「へぇ、発表したんだぁ」とは思いましたが、意外でも何でもなく、仲のいい同僚教員には、1年以上前から「きっと大損しますよ」と話していて、この半年以上は「大損しているのは確実ですね」と話していたので、予想されたことが表面化しただけです。

笑えるのは、一昨日、126日に判明したという記事になっていて、それって、私がNHK総合テレビの全国放送で「普通預金や定期預金が一番いいんですよ」と話していた日なので、皮肉なものだと感じました。

どちらにしても、自分が給料をもらっているところではありますが、私は新聞記事で内容を知る以外にないので、それ以上の情報は持っていません。

そこでここからは、一般論としての、大学の資産運用の問題を書きます。つぎの2つのパターンが典型的だと思います。

1.できるだけ元本保証に近いもので、しかし、本当は元本保証では得られないような高利回り(高金利)が売り物の金融商品で運用する。たとえば、ほぼ元本保証で、うまく行けば年率5%以上(場合によっては年率10%前後)の金利がもらえる預金や債券で運用する。

2.生半可なデリバティブの知識があるような人間が運用するために、過大なリスクをとって、デリバティブなどでハイリスク運用をしてしまう。たとえば、スワップやオプションに手を出す。

単純に考えると、1のほうがまだ安全そうで、2のほうがより危険にみえます。しかし本当は、どちらが危険かはむずかしいところです。

1の運用を実現する金融商品の多くは、「仕組預金」とか「仕組債」と呼ばれるものです。いまの日本の通常の預金や債券では、元本保証で年5%なんて金利は、絶対に出ない高さとなります。だから、デリバティブを組み込んでいるものがほとんどで、「仕組預金=デリバティブを組み込んだ預金」を覚えていいでしょう。

そして、大学などが買っている仕組預金(債)の多くは、たとえば100億円をその仕組預金で運用しているときに、円高や株安によって30億円の含み損が出ているとして、本当は、残りの70億円もすぐには受け取れなくなっているケースが多い。

さらに、損失を先送りできる(しやすい)仕組みを内包している仕組預金も多いようです。そして、その損失は表面化しない可能性が高い。

ということで、日本の大学の資産運用損失は、現在発覚しているよりもずっとひどい可能性が高いと思っていただいたほうがいいでしょう。今後もまだまだ出てくると思います。

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2008年12月 6日 (土)

NHKの生放送はやっぱり緊張します

NHK総合テレビ『家計診断 おすすめ悠々ライフ』に、今朝、出演してきました。

生放送なので、前夜からNHK(渋谷)近くのホテルに泊まり、早朝からリハーサルと打ち合わせをして、午前9時から本番。

始まると、あっという間に終わります。まあまあの出来だと思います。「それなりの人が、それなりに映りました」という感じでしょうか。反省点は多いのですが、テレビに出るなんて、そうそうないことなので、慣れようという気持ちになりません。そうなると、上手にならないのも当然で、まあ仕方がないですね。

内容はこちらに出ています。

http://www.nhk.or.jp/kakei/2008/1206/images/index.html

2年前に同じ番組に出たときには、「銀行が満期を決める預金」というデリバティブ(オプション取引・スワップ取引)を応用した金融商品を取り上げたので、それに比べれば軽い感じで、明らかに今回のほうがわかりやすかったと思います。

前回は、ほとんどの説明をクワバタオハラの2人が担当されていましたので、私はかなり楽でした。しかも、クワバタオハラはほとんどの内容を覚える必要があったのに、私はメモをみて話していいので、申し訳ない感じがしました。

今回は、私がたくさん話す必要があり、けっこう大変でした。生放送なのに、話す内容についてはかなり細かく決められているので、台本を読むほうが無難だと思い、実際にそうしました。ゲストのご家族から予定にない質問がありましたが、何とか答えられました。

前夜にホテルに着くと、NHKのディレクター経由でNHK出版から『出社が楽しい経済学』の番組テキストの最終チェック原稿が届けられていて、早朝3時から6時まで作業をして、それから出演しましたので、『家計診断』のほうは、あれくらいで許してください。しかも、『家計診断』の生放送の終了後、『出社が楽しい経済学』3回分の試写をみて、内容をチェックして、テキスト原稿の最終チェックの相談をして、NHKを出たのは午後2時すぎ。またしても、NHKに約8時間いたことになります。

それで、今日もずっと打ち合わせなどをしたNディレクターから、「吉本さんのブログの、NHKネタの比率が高いのには驚きます」と先日言われたのですが、そりゃそうでしょう。単に、NHK(というかNディレクター?)にこき使われているから、他に書くネタが発生しないということと、番組の宣伝をしてあげたいということで……

でも、今日3回分の試写をみた感じでは、『出社が楽しい経済学』はかなりおもしろいです。出来が悪い部分があるとすれば、それは明らかに、私が数分しゃべる部分ですね。あっぷあっぷでしゃべっているし、表情は硬いし、あれは全部削って「CG+プロのナレーション」に置き換えたほうがいい、と思ってしまいます。

その意味では、私自身はすごく恥ずかしいのですが、NHK教育テレビで2009年1月10日(土)23時放送開始(3月まで毎週放送で計12回)の『出社が楽しい経済学』を、どうぞよろしくお願いいたします。ドラマが中心になる番組ですが、SET(スーパーエキセントリックシアター)のみなさんの演技が、すごくいいです。

この番組をみていただければ、「経済学って、けっこう使えそう」と思っていただけると信じています。ああ、またブログのNHKネタ比率が上がってしまった。つぎは、別のネタにするよう努力します。

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2008年12月 5日 (金)

『スタバではグランデを買え!』の当初原稿にあった「練習問題」を一部紹介します(その1)

昨年9月に出版した『スタバではグランデを買え!』の各章末には、もともと、読者に考えてもらうための練習問題をつけてあったのですが、ページ数が多すぎたため、すべて削りました。

ここで、その練習問題の一部を紹介します。

興味がある方は、ぜひ考えてみてください。各問についてのご意見やご質問は、このブログにコメントをつけるかたちでお送りいただければ、このブログでお答えします(申し訳ありませんが、メールでお寄せいただいても、お返事しないとお考えください)。

[1]あるスーパーで、あるブランドのビールの500ml缶(6本入り)が安売りされた日のことです。同じブランドの350ml缶(6本入り)は値下げされませんでした。500ml缶は350ml缶より安い価格にまで値下げされたため、その日に限っては、サイズの小さい350ml缶のほうが価格が高いという状況で、しかし両方が同時に売られていたそうです(その店でアルバイトをしていた学生から聞きました)。まったく同じブランドのビールでの話です。

ビールを冷やして陳列しておく棚の一番目立つ場所に、その日の安売り商品になった500ml缶が置いてあり、350ml缶は少し離れた位置に置いてあったのですが、両者の価格を比べれば、誰も350ml缶のほうを買わないように思われます。この場合、スーパーの価格設定は合理的でしょうか。あるいは、スーパーが合理的に価格設定をしているとすれば、500ml缶のほうが安いのはなぜでしょうか。理由を考えてみてください。

[2]2006年12月に東京・中野にできた生鮮100円コンビニ「ショップ99」の開店セールでは、同じ99円で「丸ごとのキャベツ」より「半分のキャベツ」のほうがよく売れたそうです(2007年1月8日の日本経済新聞)。その理由を考えてください。

[3]とある田舎の村に、1軒の駄菓子屋があり、その店では缶コーヒーが100円で売っています。ホットもアイスも店先で売っており、いつ行っても混んでなどいませんから、すぐに買えます。ところが、店の横に自動販売機があり、まったく同じ缶コーヒーが120円で売っているとします。

誰もが、店内では100円で売っていると知っていますし、買う際の手間や時間もほとんど変わりませんから、店が開いている平日の昼間は、誰も自動販売機では買いません。しかし、店が閉まっている夜間・早朝・土日は、自動販売機の缶コーヒーがそれなりに売れます。

平日の昼間だけをみると、同じ缶コーヒーがちがう価格で並んで売られていることになります。何らかの取引コストが存在するために、そのような現象が起きているのですが、それはどのようなコストでしょうか。考えてみてください。

《ヒント》お店の経営者とは別の人が自動販売機を設置していると想定してみましょう。その人は夜間などに120円で売れることに満足しているものの、本当は、平日の昼間には横の店に対抗できる価格で売りたいと思っているはずだとすると……。

[4]A社が売り出した商品がヒットしたあとで、ライバルのB社が同じような商品を、商品名やパッケージもかなりA社の商品に似せて売り出すことがあります。もしB社が無名の企業であれば、先行するA社の商品の知名度を利用しようとしているだけだと感じられます。

しかし、B社がその分野ではすでに有名で、ブランドイメージも大切にしている企業であったとすると、そのような戦略の背景には、自社製品に対する強い自信があると思われます。なぜでしょうか。また、あなたが買い物をするときに、これに相当する事例を探してみてください。

[5]花子さんは、自分が持っているデジカメはかなり古くなっており、最新機種と比べて機能がかなり劣っていると感じています。だから買い替えたいと思いつつ、なかなか買い替える踏ん切りがつかなかったのですが、海外旅行に行く直前になって、やっとデジカメを買い替えたとします。

この買い替え行動の長所と短所は何でしょうか。

[6]筆者が実際に、家電量販店のチラシにあった洗濯機(大手メーカー製の売れ筋商品)を売場に見に行ったところ、チラシにあった価格より6千円近く安くなっていて、11万2千円でした。それは最大8kgの容量まで洗濯できる機種でしたが、まったく同じ大きさ・デザイン・機能で、洗濯物の最大容量だけが7kgと少し小さくなっている機種も隣に並んでいました。

ところが、容量が小さいほう、つまり7kgタイプの価格は、なぜか8kgタイプより6千円も高く、11万8千円でした。外形の大きさはまったく同じですから、7kgしか洗濯できないものよりも、8kgまで洗濯できるほうが明らかに便利です。それなのに、7kgタイプより8kgタイプのほうがかなり安いのです。

(a)このような価格の逆転現象が起きるのはなぜでしょうか。

(b)しばらく使ってから中古品として売る(下取りしてもらう)場合、7kgタイプと8kgタイプの価格差はどうなっていると予想されるでしょうか。

(c)2つのタイプを並べて売っていれば、7kgタイプを買う客はほとんどいないと思われます。ではなぜ、筆者が見に行った店では並べて売っていたのでしょうか。店側の立場で考えてみましょう。

[7]企業はいろいろな方法を駆使して、まったく同じ商品を、高く買ってくれそうな客には、できるだけ高く売り、安くないと買いそうにない客には、それなりに安く売ろうとします。これを「価格差別」と呼びます。

そのやり方を大きく2つに分けると…

(A)グループ別の価格差別:たとえば、客を2つのグループに分けて、価格の上下に反応して購入量が変動しやすいグループには、価格を下げて、たくさん売ろうとする。一方、価格の上下に対して購入量がさほど変動しないグループには、価格を上げて、より高く売ろうとする。

(B)自己選択型の価格差別:クーポン券を使う方法が典型的で、小さなクーポン券を配り、それを持ってきた客にだけ割引をする。安くないと買わないタイプの客は、きちんとクーポン券を持ってくるので、実際に割引の適用を受けて安く買う。他方、高くても買うタイプの客は、クーポン券を捨てたり忘れたりしやすいので、割引が適用されず、高く買いやすい。この方法だと、客自身の行動によって、自動的に価格差別ができる。企業側がグループ分けするのでなく、客自身に選択してもらうところがポイント。

さて、経済学の入門書などで、価格差別の例としてよく出てくるのは、パソコンのソフトウェアにおける学割です(アカデミック・ディスカウントなどと呼ばれています)。

多くの入門書には、ソフトウェアでの学割は「グループ別の価格差別」の例として登場します。学生のグループは、価格が安くなると、購入量が大きく反応して増えやすい一方で、社会人のグループは、相対的に価格に反応しにくく、高くても必要なら買う可能性が高い。だから企業としては、学生には安く、社会人には高く売ったほうが儲かるという説明です。

じつは私(吉本)は、この説明に不満です。ソフトウェアを販売している企業によっては、この論理で説明できそうな行動を取っている企業もなくはありません。しかし、マイクロソフトやジャストシステムなどの多くの企業は、確かに学割を用意して価格差別をしていますが、これとは別の考え方で説明すべき価格差別をしている、と考えています。

実際にソフトウェアを売っている店に行って、マイクロソフトやジャストシステムの製品を学生などが学割で買うところをみれば、この考え方だけでは説明できないことがわかるでしょう。そもそも、学校の先生(大学教員もふくむ)も学割の対象として安く(学生と同じ価格で)ソフトウェアを買うことができますが、「安くないと買わないグループ」に入るようには思えません。

あなたなら、ソフトウェアの学割について、どのような考え方で説明しますか。

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2008年12月 2日 (火)

子供のひと言に救われる

やっと、不毛で際限がなくみえた仕事の終わりがみえそうで、今日は少し落ち着いています。

昨日が疲労のピークでした。よほどひどかったようで、周囲にかなりご心配をおかけしました。申し訳ありません。

私も大変でしたが、6歳の息子も、一昨日の日曜は朝から嘔吐を続けて何も食べられず、昨日(月曜)の朝一番で病院に行きました。それで自家中毒と診断され、1時間の点滴を受けて戻ってきました。

私は、朝から広島の自宅を出て、昼には職場のある名古屋に戻るつもりでしたが、新幹線を遅らせて、子供が病院から帰るのを待ちました。実際に、子供が病院から戻ったところで、すぐに、おばあちゃんに迎えに来てもらい、私と妻は仕事に出かけました。

それで、1時間の点滴を受けたとはいえ、1日半以上、何も食べていないに近い子供が、それなりに元気になったのには驚きましたが、まだまだ調子は悪そうでした(実際に、その昼にも吐いたとのこと)。

うちの広島の家(家内が職場から家賃補助をもらって借りているマンション)は、おじいちゃん・おばあちゃんが住むマンションから徒歩3分で、かつ、妻の通勤用の軽自動車はそっちの駐車場にあります。その短い距離を子供を連れて歩いているとき、たぶん、私の顔色が相当に悪かったようです。

確かに、前夜は1時間ちょっとしか寝ていなくて(前日の昼に少し昼寝をしていましたが)、それまでの疲れもありましたから、かなり疲れていたのでしょうね。

それで、まだふらふらとゆっくりと自転車に乗っている子供が、妻のほうを向いて言いました。

「この前、僕が掘ってきたおイモ、お父さんにも食べさせてあげんといけんね。」

かなり前に幼稚園のイモ掘りで掘ってきたサツマイモが、まだおばあちゃんの家にあり、それを1本もらってきて、私に食べさせようということらしい。

ふかしイモがいいか、天ぷらがいいか、妻とおばあちゃんと息子が調理方法を話し合ったあと、息子が、今度は私のほうを向いて、笑顔でひと言。

「おイモ、おいしいんよ。」

言外に「おイモ食べたら、元気になれるけぇ。僕のおイモあげるね。」という気持ちが、よく伝わってきた。

うちの息子は一人っ子の典型例で、わがまま放題なんですが、大人の操り方はうまい。広島と名古屋のおじいちゃん・おばあちゃんへの態度をみていて、いつも感心していましたが、今回は、私も息子のおかげで助かりました。

息子の言葉に対して、私は、ただ軽くうなずいただけですが……

そのときの息子は、朝から病院で大嫌いな注射と点滴をされて、自分のほうがよほどふらふらの体調で、それなのに、親は両方ともサッサと仕事に行ってしまうという状況で、かなり寂しいはずなのに……そんな子供に気を遣ってもらうようでは、父親として本当に情けない。

ということで、今週はまだまだ明日から大変なのですが、倒れない程度にがんばるつもりです。

頭が回らないので、こんな個人的な日記を書くしかなくて、申し訳ありません。ここまでお読みいただいたみなさまに、感謝いたします。

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