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2009年3月28日 (土)

「出社が楽しい経済学」の放送『第12回(最終回) ネットワーク外部性』監修者の言い訳

最終回でした。とはいえ、感慨とかはない……なぜかどんな感情もわいてこない感じです。不思議ですね。
あと3日で、大学教員生活を終えますが、それについての感情もほとんどないのです。少しあるとすれば、「うれしい」と「不安だ」という感情ですが、それもさほど感じないのが本当なのを、周囲の大学関係者には大げさに「すごくうれしいです!」とか、「けっこう不安ですよ!」と言っています。ほぼ無感情だと言うと、いかにも大学教員という仕事を軽くみているようで……社交辞令ということですね。
自分が大学教員を辞めることについては、はっきりと、息子が3月で幼稚園を卒園したことよりも、ずっとずっと、どうでもいいことという感じです。3年も回り道をして入った大学院で5年間も大学教員になる修行のようなものをして、15年間続けた大学教員生活ですから、修行期間などをふくめて20年以上の仕事と決別することになりますが、そんな過去の時間やおカネはまさに「サンクコスト」ですから、すっぱり無視します。私は、経済学の基本原理にしたがって行動するのが、けっこう好きなんです。
話を番組に戻すと、この『出社が楽しい経済学』について「やることはやった!」という達成感はあるのです。ただ、実際の収録・編集・執筆などで私がやるべきことは、ほとんど11月末までに終わっていて、残りの作業が12月から3月上旬までずるずると続いた感じでした。そのため、私のなかでは過去の話になっているのです。ということで、やはり「サンクコスト」に対しては感情がわかないということです……よくも悪くも、経済学が身についています。

番組ガイドブックをお読みいただければわかりますが、「ネットワーク外部性」は「規模の経済性」の延長線上にあるような概念で、だから私の好みとしては、先に「規模の経済性」をキーワードとして取り上げたかったわけです。もう一度、構成を最初から考え直しても、やはり、私は規模の経済性のほうを選ぶでしょうね。そのなかで、経験の経済性、範囲の経済性、ネットワーク外部性の話も入れればいいという考えです。
でも、番組的には、ネットワーク外部性で終わって大正解なのは十分に理解しています。最後の3回は、何となく将来のことを考える内容になっていて、だからネットワーク外部性が最終回に入りましたが、規模の経済性に代えていたら、もっと前に入れていたでしょう。
私はこの番組は一定の成功をしていると信じていますので、成功を前提にお話しますが、この番組が経済学教育の面で一番成功しているところは、「経済学の素人がおもしろいと思う内容を、経済学の素人がおもしろいと思う順番で、経済学の素人がおもしろいと思う題材(見せ方)で映像化した」ということに尽きる気がします。
成功のカギは、もともと経済学の素人だった制作スタッフが急速に経済学のエッセンスを学んで、自分たちのものとして修得したことにあります。もちろん、かなりきちんと理解しても、番組制作となると、教える側に回るのですから、専門家からみて細かなまちがいをたくさんしてしまいますが、それは専門家がチェックして修正すればいいことで、実際に、経済学の専門家からみていろいろと問題が残っているとすれば、それはチェックした専門家=私の失敗です。制作スタッフのみなさんの経済学修得度は、非常に高いと思います。きちんとした講義を受けたわけではないし、他にいろいろと仕事があって忙しいなかで何冊かのテキストを自力で読み、短期間で勉強された結果とは、とても思えないほどです。
一番のポイントは、制作スタッフがみんなで経済学の勉強をしながら番組の制作をすることで「ネットワーク外部性」が強力に働いたということでしょう。この辺りの話は、番組ガイドブックにくわしく書かれています(ディレクターによる番組裏話や、最後のプロデューサーのお話をお読みください)。
だから、最終回が「ネットワーク外部性」だったのは、制作スタッフにとっては必然……そこまでわかっていても、私ならやっぱり「規模の経済性」にするよなぁ……くどいですね。

さて、このあとの展開ですが、いくら私でも、NHKに無断ですべて書いてしまうわけにはいきません。書けそうなことだけ書きます……本当はまずいことも書きそうですが。

1.DVD化の話は、まだ何も決まっていません。強力なライバルがないので、長期的には一定数が必ず売れると思うのですが、短期的な結果がよくわからない状況では、実現はむずかしいということもわかっています。でも、何とか実現されることを願っています。

2.番組ガイドブックは海外展開を模索中です。くわしくは書けませんが、私の『スタバではグランデを買え!』がすでに中国・韓国・台湾で翻訳出版されていて、他にも翻訳出版されているものや、その予定のものがあります……あとはご想像にお任せします。

3.集中再放送があります。しかも「総合テレビ」で!……深夜ですが。
NHK番組表
4月1日深夜(正確には翌4月2日)に3回ぶんが、NHK総合テレビで放送されます。
4月2日1:50〜 第8回「裁定」
4月2日2:21〜 第9回「囚人のジレンマ」
4月2日2:51〜 第10回「共有地の悲劇」

思ったよりもずっと視聴者はたくさんいて、しかも、私たちの想像をはるかに超える高評価を得たようです。視聴率やホームページのアクセス数など、いろいろな情報をもらってはいますが、それらは安易に載せられませんので申し訳ありません。でも、ホームページのアクセス数がNHK内部での番組の評価につながっていることは述べておきます。クイズの答えや見逃した回の内容などを番組ホームページでみてくださった方には、お礼を申し上げます。みなさんのクリックが、総合テレビでの集中再放送につながりました(これは私がそう思っているだけですが)。

私が「出社が楽しい経済学」の話をブログに書くのは、さて、これで最後になるのか、それとも、また別の機会が来るのか? いまは何とも言えませんが、DVD化のお知らせなどができるときが来ることを願っています。
3ヵ月間、番組とともにこのブログをみてくださったみなさまに、改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

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コメント

最終回もすごく面白かったです。
AT&T。
子供の頃、世界一の自動車メーカーが
GMだと知ったとき、なぜなの?
自動車を発明したダイムラーでもなく、
T型フォードで成功したフォードでもない。
経済学なんか、まったく、商売に役に立たないと
おもっていましたが、全く違うのには驚きました。
洋書でnaked economics(邦訳あり)も、他のメルマガで
同時期に知ったので、この番組と並行してみておりました。
ついでに、資本論にも、興味がでてきました。
本当にすばらしい番組だったとおもいます。
私は、読売新聞をとっていますが、最終回の
番組案内がありました。
教育テレビの番組が、番組案内にあったので、この
番組が大成功であったとおもいます。

投稿: パクパク | 2009年3月29日 (日) 16時41分

経済学初心者の私にも毎回楽しめる番組でした。
裏で様々な工夫があったんですね!
本当に勉強になりました。ありがとうございます

投稿: 有栖川 | 2009年3月29日 (日) 20時10分

私も最初から「出社が楽しい経済学」をみてました。
とても面白かったです。女性の私でもわかりやすく、最終回になってしまうなんて、残念です。シーズン2を希望します。
もっと経済学について学びたいと思いました。

投稿: br | 2009年3月31日 (火) 22時24分

経済学の「け」も知らない私には「出社が楽しい経済学」は楽しく、経済学をもっと知りたいなと思わせてくれた番組でした。第一回放送を偶然見かけ、その後の回は録画して、ご飯を食べながら、寝る前のひと時などに再度見ていました。
現在、私は看護系の大学院生ですが、看護学と経済学、現象のとらえ方がかなり違っていて、改めて学問の面白さを感じました。
経済学については、生まれたての赤ちゃん(もしかすると胎児かも)の私ですが、経済学の入門書から学んでいこうと思います。

投稿: ゆき | 2009年4月 6日 (月) 19時58分

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