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2013年4月16日 (火)

ビッグデータ時代と騒がれているのに、消費者物価指数のデータはきちんとよまれていない?

「ビッグデータ」の時代といわれ、関連する本がいろいろと売れています。

とんでもなく膨大な量のデータという意味で、情報通信技術の進歩と個人による情報端末(ケータイ、パソコンなど)の利用増加によって、企業には膨大な顧客情報が流れ込むようになりました。
これをいかに活用するかについて、いろいろな企業がシステム開発におカネを投じ、人材育成を始めたといったニュースが目立つようになりました。データを分析する能力をもった人材は、今後、アメリカでも日本でも不足しやすく、だからおカネを稼ぎやすいといわれています。
文部科学省が、こうした情報化への対応として、学校教育での「確率・統計」の学習を増やしました。たとえば、昨年から高校の「数学Ⅰ」に「データの分析」という章が新設されました。
ところが、残念なことに、データ読解力を鍛えるうえで本当に必要な数学の項目が高校数学などから外れていたりして、ビッグデータ時代にどんな教育をするべきなのかは、まだきちんと確立していない感じです。
データ読解力は、ほとんどが経験値によって構成されているというのが、私の意見です。つまり、たくさんデータを読めば、データ読解力が上がるけど、理論の勉強だけでは、よほどの天才でないかぎり、現実社会のデータ読解力はさほど高まらないと考えています。
中学生や高校生に経済データを読むことを楽しんでもらえるようにと願って執筆し、3月に発売になったのが、下記の拙著『高校生からの経済データ入門』(ちくま新書)です。
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昨年の9月ごろに執筆を終えていて、新学期に変わるタイミングまで待って出版となった本で、そのため、アベノミクスを意識していないのですが、アベノミクスでいちばんのポイントとなる「消費者物価指数」のデータを第1章で取り上げ、あれこれ分析しています。
消費者物価指数は、膨大なデータをふくむもので、筆者もまだ全部は読み込めていません。それでも、アベノミクスについて拙著『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)を執筆しているあいだ、毎日のようにながめていました。
消費者物価指数のように、細かなデータの積み上げでつくられたものは、細かく読めば読むほど、なんらかの発見があるものです。だから、アベノミクスの第1の柱が「金融緩和によって年2%の消費者物価上昇率をめざすインフレ目標政策」で、これを話題にするのであれば、まず、消費者物価指数のデータをていねいに読むべきです。
ところが、日本のマスメディアは、肝心の消費者物価指数のデータをまともに読まずに、しかしアベノミクスやインフレ目標政策について大々的に報じるという、あまりに稚拙な経済報道をみんなでやっています。
とくにひどいのは、マスメディアが『経済財政白書』などの基本的な白書をまったく参考にしていないことです。2012年夏に内閣府が出した『平成24年版 経済財政白書』は、インフレ目標政策に関連するデータを細かく分析していて、とても参考になるのに、それを引用して論じるという、とても簡単なことができていない。残念です。
あまりに基本的なことから指摘すると、今年1月に安倍政権と日本銀行が年2%の消費者物価上昇率を目標に設定すると発表したとき、いくつかのテレビ局の全国ニュースで、「1993年以降、年2%の消費者物価上昇率は実現していない」との報道がありました。
これは、全国ニュースで流す内容としては、あまりにお粗末なものでした。第1に、当時の日本銀行の記者会見で、当時の白川総裁が、2008年の夏に「前年同月比で2%超の消費者物価上昇が起きていた」ことに言及しています。一時的にではありますが、テレビ報道の解説とは異なる現象があったといえます。
また、地域別にみると、1年単位、つまり年平均でみた消費者物価上昇率が、21世紀に入ってからも年2%を超えたことがあるという地域があちこちにあります。2008年には、北海道・東北・沖縄地方でこの現象が起きています。これらの地域の生活者にとって、「1993年以降……実現していない」という解説はまったくのウソでした。
アベノミクスのインフレ目標政策に興味をもった人が、地域別の消費者物価指数のデータをていねいに読みさえすれば、いろいろなことに気がついたはずです。都道府県の県庁所在市のデータを片っ端から読めば、本当に年2%のインフレ目標達成が可能かどうかについて、とくに重要なポイントも発見できたでしょう。
私は実際にそうやって調べて、『日本の景気は賃金が決める』を執筆しました。
ブログのリニューアルに際し、過去の記事をすべて削除してしまいましたが、かつて書いていたことの一部については、必要に応じてまた書かせていただきます。
ここでは、私の仕事のやり方について書きます。ビジネス書の著者としての私は、他の人たちがおこなっている作業の何倍も多い作業をやることで、著者としての差別化をはかっているつもりです。私は、作業量で勝負するタイプです。
この点に自信があったからこそ、専任の大学教員を辞めて、著述業をメインにするフリーランスになろうと決意できました。いくら才能があっても、毎年たくさんの本を執筆することはむずかしい。でも、私の場合には、才能ではなく、作業量の多さを武器にしているから、安定して本の執筆が続けられると考えたわけです。
そんなわけで、著者としての稼ぎだけを考えるなら、他の人たちが消費者物価指数のデータをきちんと読まずにアベノミクスやインフレ目標政策について論じてくれるのは、私にとって有利なことです。しかし、基礎となるデータをきちんと読まない人たちがあまりに多い状況は、とても残念です。また、経済学者やエコノミストという肩書きをもつ専門家への不信がさらに強まれば、長期的にみて、私にも不利益です。
せっかく、ビッグデータ時代と騒がれているのですから、マスメディアや、広く情報発信をしている経済の専門家が、もっともっと基礎データを読むようになってほしいと願っています。

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