フォト
2016年3月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

« プラザ合意30周年とFRBの利上げ | トップページ | 続・データの読み方・示し方についての講演を無料で公開します »

2016年2月 1日 (月)

データの読み方・示し方についての講演を無料で公開します

先月、3年前にも呼んでいただいた自動車メーカーの方からのご依頼で、東京で、データの読み方についての講演をしてきました。知人の中に、それを聴きたかったという人が複数いましたので、ほぼ同じ内容のプレゼンテーション動画を制作し、無料で公開すると約束していました。2016年1月のうちにと約束していましたが、実際には、1月を過ぎての公開となってしまいました。

それとは別に、読売新聞の記者が、昨夏に出た本に関連してWebに載せる原稿を書いてほしいと依頼してきたので、こちらは1月末までに書いて送ったのですが、結局、載せないとの連絡がありました。そこで、このブログに載せます。
「家計調査と教育投資」
 全国学力テストで、公立小学校がいつも1位になる秋田県です(2015年で8年連続の1位となりました)が、大学進学率は低いことが批判されたりします。確かに、大学進学率の1位は東京都で、男女ともに7割を超えているのに対して、秋田県は男女ともに4割を下回っています。
 しかし、学歴は、第一に、それが就職につながってこそ、意味があると、筆者は考えます。第二に、無制限にお金をかけて、学歴を買える親の子供だけが、高学歴を獲得できるのであれば、教育が経済格差をさらに拡大する可能性があります。低所得世帯に生まれた子供でも、教育によって、経済格差を縮めることができるかどうかを考えると、教育投資における投資効率も大切です。
 日本の総務省が実施している「家計調査」は、諸外国には見られないほど、詳細なデータを収集しています。他の国は、たいてい、消費者物価を計算するための基礎データとして類似調査をしているのに対して、日本は、たくさんの世帯に、買い物をした商品について質量等を測ってもらうための器材を配布し、膨大な調査をおこなっています。
 毎年、餃子消費1位の街が宇都宮市なのか、浜松市なのかの争いで注目を集める家計調査ですが、教育投資の分析にも使えます。筆者が2015年夏に出版した『マーケティングに使える「家計調査」』(講談社)で示した、2012・13年の平均での数値に基づいて、説明しましょう。
 秋田県の県庁所在市である秋田市は、家計が高校補習教育・予備校に支払う金額で全国最下位です。その上で、一定数の国公立大学合格者を出しているため、家計が支払う国公立大学授業料を教育費で割って、投資効率を計算すると、全国1位になります。なお、高校補習教育・予備校に支払う金額が全国1位の県庁所在市は、奈良市です。奈良市は、国公立大学授業料でも1位で、大学入試直前に多額の資金を投じて、結果を出していると言えます。東京都区部は、幼児・小学校補習教育の支出で2位、私立大学授業料でも2位です。子供が低年齢のうちから教育投資に金をかけていること、また、小学校から大学までエスカレーター方式で進学できる名門の私立大学に通わせる家庭が多いことがうかがえます。
 かつては、高所得世帯の子供が私立大学に進学し、低所得世帯の子供が国公立大学に進学するという棲み分けがあったように思いますが、2002・03年のデータと、10年後の2012・13年のデータを比較すると、世帯年収を5段階に分けて、最上位の世帯が、かつては私立大学授業料で大きなシェアを占めていて、確かに、子供を私立大学に通わせる傾向が強かったのが、近年は、国公立大学授業料でも過半数のシェアを占めるように変化しています。低所得世帯も、子供にかける教育投資を10年間でかなり増やしたのですが、高所得世帯はもっと増やしていて、マネーゲーム化した教育投資の競争が、親の経済格差を子供に引き継がせる方向に働きかねない状況を作り出しています。なぜなら、国公立大学は、政府の補助によって、授業料が安く抑えられている上に、就職においてもブランド力が高く、高所得世帯の子供が国公立大学卒業の学歴を低コストで獲得して、高所得を稼ぎやすくなるのであれば、経済格差が親から子供に引き継がれてしまうと考えられるからです。
 その中で、公立小学校の教育がしっかりと結果を出している秋田県などは、経済格差の是正に教育が役立つ可能性をもたらしてくれるものだと考えられます。秋田県の大学進学率が低いからという理由だけで、批判せず、全国学力テストでいつも1位を争う秋田県や福井県をもっと評価するべきでしょう。
 また、2014年3月に高校を卒業した生徒について、大学進学率と就職率を合計すると、岐阜、三重、福井、愛知、静岡、秋田、山形、広島の10県がトップ10となります。大学への進学も重要ですが、多くの子供は、あくまで良い就職を求めて、そのステップとして大学に進学します。また最近は、社会人向けの大学・大学院教育が充実してきましたから、高校卒業後に就職して、資金を蓄えてからまた学び直すことも可能です。奨学金の制度がもっと充実すればいいのでしょうが、子供自身がまず稼いで、その後に学ぶという順での教育投資も考えれば、高校卒業段階での就職率もふくめて評価するという視点も必要でしょう。
 なお、大学卒業後の就職率については、卒業予定の最終学年の大学生・短大生に対して、文部科学省と厚生労働省が共同で調査を実施しており、最終学年の10月から、12月、翌年2月、そして卒業後の4月に、就職内定率と就職率を調査・計算して、公表しています。
 就職希望率と、就職内定率を、各時点で調査しているのですが、男女別に分けて、また、国公立・私立大学に分けて、さらに、文系・理系別、地域別でも、統計を整理しています。Excel形式でダウンロードできますから、筆者も何度か分析に使いました。
 相対的に、私立大学の女子学生が粘り強く、2月に内定をもらっていなくてもあきらめずに、ラストスパートで就職を勝ち取る学生がけっこういます。他方で、国公立大学の男子学生は、もともと、就職希望率が低かったりします。
 平成26年4月から働き始めた大学卒業者について、地域別の就職率を見ると、一番高いのは、関東地域で、96.4%、次が中部地域で95.4%、さらに、近畿地域が93.8%、中国・四国地域と北海道・東北地域が同率で92.8%と続きます。一番低いのは、九州地域の90.8%でした。
 筆者も、かつて名古屋にある私立大学でゼミを持って教えていたときに、大半の学生が、就活期間中だけ、東京か大阪に拠点を構えて(親戚の家に泊めてもらうとか、ウィークリーマンションを借りるとかして)いたことを記憶しています。それでも、企業説明会のエントリーが、特定の大学の学生だけで締め切られることが多いため、就職活動がなかなか進められないと嘆く学生が多かったことが印象に残っています。
 そうした事情をよく知っている親は、最初から、子供を関東か関西の大学に進学させようとします。実際に、筆者が勤めていた大学の卒業生で、地元の有力信用金庫の役員だった方から、「ウチの息子が合格しましたが、関西にある某大学の方に進学させます。申し訳ありません」と言われたことがあります。どの親も、子供の教育投資にはずいぶん多額の資金をかけていますから、仕方がないと考えます。
 家計調査のデータは、様々な分析に使えます。地域振興のために活用することもできるでしょうし、実際に、うまく利用したのが、「ギョーザの街」としてアピールした宇都宮市です。しかし、家計調査が示す餃子消費のデータは、テイクアウトだけを集計していますから、宇都宮市内の外食での餃子が美味しいことを保証するものではありません。それでも、公的なデータで、こんなに整理されたものがあるのですから、高い予算を使ってマーケティングリサーチの専門企業とかに依頼しなくても、もっと公的統計を、マーケティングや地域振興に活用するべきだというのが、筆者の主張です。どれも、日本政府が莫大な公金と人員を投入しておこなっている調査だからです。
さて、データについての講演動画は、下記にリンクがあります。グーグルドライブに保存してある動画ファイルですが、クイックタイム形式ですので、プレイヤーをインストールした上でご覧ください。
まず、データの読み方の方の動画です。2つに分かれています。
データの示し方を中心にした、残り3つのファイルは明日、公開します。

« プラザ合意30周年とFRBの利上げ | トップページ | 続・データの読み方・示し方についての講演を無料で公開します »