映画・テレビ

2009年11月 5日 (木)

「出社が楽しい経済学」の放送『第4回 心の会計』監修者の言い訳

 いま、今年一番やりたかった仕事(共著での本の執筆)が追い込み段階にあって、他にもいろいろ仕事があって、さすがに体調が崩れがちな状況です。11月下旬になれば、少しは楽になるかと期待していますが、これまでも「5月が終われば」とか「8月が終われば」とか「9月が……」「10月が……」といってきたので、さすがに精神的に参っています。どちらにしても、12月と1月は家や大学(非常勤講師としてまだ研究室を使わせてもらっています)の片付けをしないといけないので、12月になれば、いくつかの仕事を除いて強制的に仕事を中断するしかありません。だから、あと1ヵ月弱ぐらいは、何とか倒れずにがんばりたいと……正直にいえば、さっさと倒れて楽になりたい感じですが、私の場合、そういう状況ではよほど無理しても何とかなるという、哀しい習性(体質)です。
 さて、番組の話。予告のなかで「合コン必勝法」とかいっていたので、それを聞くたびに「合コン必勝法なんて出てこないぞ」とつぶやいていました。ちょっと大袈裟な予告でしたね。「合コンでの失敗のひとつを防ぐ方法」ぐらいのものでした。ただし、ピーク・エンドの法則は、役に立つ話だったはずです。講演とかプレゼンテーションをする人も、この法則を覚えておくべきでしょう。
 いやゆる行動経済学を題材にした回でしたが、もともと、NHKのディレクターは複数回に分けてやりたがっていて、全8回をゲーム理論と行動経済学だけでやりたかったのでした(くどいようですが、それなら監修者は他の人にしたほうがいいって、何度いったことか……)。ゲーム理論のほうは、減らしたものの複数回になりましたが、行動経済学ネタは、このあとの「勝者の呪い」の回が少し関連しているものの、基本的には、今回の1回だけにいろいろと盛り込んだかたちです。そのため、おもしろい話が続けて出てきて、よかったと思います。
 春から夏にかけて、行動経済学ネタが1回だけの場合には、キーワードを「プロスペクト理論」にして「価値関数」と呼ばれるものの説明を中心にやりたいと、頑なに主張するディレクターを説得し、キーワードを「心の会計」に変えてもらいました。それでも、当然ながら、価値関数の話は入れるという話だったはずが、できあがってみたら、まったく入っていません。私が「この番組で価値関数の説明は無理」ということを何時間もかけて説得しても、まったく受け入れてもらえなかったのですが、制作にとりかかったら、無理だと気づいたみたいです。……それなら、何時間も粘らないでほしかった。この回についての打ち合わせのほとんどは無駄だったよなぁ……。というのが、今回についての強烈な印象で、他にあまり書くことがない状況です。
 全体的には、よくできた回だと思います。行動経済学そのものがおもしろいからでしょう。ただし、私の2つ目の解説は、じつは異なる2つのパターンが収録されていて、ボツになったほうでは、行動経済学の使用上の注意のような話をしていました(この点でも、とにかく私にとって無駄な時間が長かった回でした)。
 行動経済学に出てくる「非合理(不合理)行動のパターン」は、実験によって明らかにされるのですが、たいていは、その実験の際に合理的なほうの行動を選択した人たちも一定程度いるのです。行動経済学が説明しようとする非合理行動は、多数派の行動ではあるけれども、誰にでも当てはまるものではないということです。ですから、行動経済学に出てくる非合理行動のパターンだけを前提に経済現象を説明することには、そもそも無理があります。最近は、行動経済学の入門書がよく売れて流行していて、「従来の経済学は行動経済学に取って代わられる」と考える人もいるのでしょうが、私はそうは思いません。行動経済学は、従来の経済学を補完するものだと思います。
 次回は「スクリーニング」です。私が「第2シリーズの初回はこれにすべき!」とずっと推していたキーワードです。そういったバイアスがかかっていますが、私は、次回こそがこのシリーズ最高の回だと思っています。経済学的な内容よりも、単純に、次回のドラマがすごく好きなんです(理由は、ドラマの終わり方をみれば、すぐわかると思います)。この番組の売りは、やはりSETのみなさんが演じるドラマだということが、改めて実感できます(一般の視聴者からみれば、主人公は大竹さんが演じる小山内くんなのでしょうが、経済学者の立場では、野添さんが演じる居相田係長が主人公にみえるということも、改めて実感しました)。ぜひ、お楽しみに!

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2009年10月23日 (金)

「出社が楽しい経済学」の放送『第3回 ヴェブレン効果』監修者の言い訳

 丸い体型の吉本です。今回のヴェブレン効果、いかがでしたか? 何とかキャラメル、うちも1年半前に某所の空港で家族旅行の帰りに買いました。正直、私と息子は美味しいと感じなかったのですが、行列に並んで買った妻は、美味しいと言い張って、ひとりで食べていました。値段を知っているのは妻だけですから、妻にはヴェブレン効果が働いたのでしょうが、値段を知らない私にはヴェブレン効果は働かなかったようです。
 今シリーズの全8回のキーワードのうち、NHKスタッフの最初の反応が一番悪かったのが、たぶんこのヴェブレン効果です。ところが、女性スタッフが共感をもつと答えたことで、キーワードとして残りました。実際に、現代の消費のほとんどは、見栄を張るための「みせびらかしの消費=顕示的消費」なのです。それが学問的にも認められているとなれば、見栄のための消費がいっそうやりやすくなる。だから、ヴェブレン効果は、女性から支持が得られる言葉なのでしょう。
 次回は、いわゆる行動経済学ネタ、かなりおもしろいです。お楽しみに!

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2009年10月22日 (木)

「出社が楽しい経済学」の放送『第2回 コミットメント』監修者の言い訳(1週間遅れですみません)

 とにかく時間に余裕がなく、先週放送ぶんの録画を今朝みました。朝まで寝たり起きたりしながら仕事して、朝、頭をスッキリさせるために風呂に入る。そのとき、ワンセグお風呂テレビで録画をみました。
 第2回については、正直なところ、私は「コミットメント」をキーワードとすることにあまり賛成しておらず、このような内容でつくるのなら「ホールドアップ」のほうをキーワードにすべきだと、ぎりぎりまで主張していました。また、ドラマの内容についても、脚本の前の段階から、ホールドアップのところがむずかしくなりすぎると指摘していたのですが……。
 初回に続いてゲーム理論の内容ですが、NHKのスタッフがゲーム理論については熱心に勉強していて、だからこそ、こういう内容でつくりたいという思い入れがすごくあったのだと思います。結果として、私は監修者としてはあまり役割を果たしていません(相談時間そのものは短くなかったのですが)。NHKのスタッフのネタ本での説明が、さほど一般的なものでないとか、さほど現実的でないとき、修正案を出していて、それはある程度反映されています。その程度です。また、自分の解説部分では、相変わらず好き放題なことをしゃべっています。もっとも、一番好き放題にいっていた部分は、しっかりカットされています(やむをえない判断なのでしょう)。
 今夜の第3回は「ヴェブレン効果」。このキーワードは、私の希望が強く反映されたものです。なので、私自身もすごく楽しみにしています。

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2009年10月 9日 (金)

補足です!(続・「出社が楽しい経済学」の放送『第1回 ロックイン』監修者の言い訳)

1.番組でのクイズの答えは番組ホームページをみてください。こちらにお問い合わせいただいても答えられません(すでにお問い合わせいただいた方にも、ここに注意書きを書く以上の対応はいたしません)。
2.第1シリーズからナレーターさんが変更になったのは、前の方が裏番組の仕事をされているからです。NHKは理由を書かないだろうし、ネットで調べればわかることですので、私が言い訳しておきます。ただし、これ以上のことはご自分でお調べください。
3.キーワードを連呼する外国人が変更になった理由は、すでにお伝えした通り。
4.ドラマの脚本を書いている方も、じつは変更になっています。これも番組ガイドブックなどに書かれていますので、これ以上のことはご自分でお調べください。
5.監修・出演の専門家が変更になっていない理由は、すでに何度もお伝えした通り。……これはどうでもいい話ですね。

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2009年10月 8日 (木)

「出社が楽しい経済学」の放送『第1回 ロックイン』監修者の言い訳

ドラマはおもしろいし、全体にいい出来なんです。でも正直なところ、全8回のうち、自信をもって「みてください」といえる回は、いくつもない状況です(理由については、過去のブログを参照願います)。とはいえ、どんな不満やクレームが来ようとも、こうなったら覚悟を決めてお願いします。

「出社が楽しい経済学、第2シリーズも、ぜひみてください!」

だって、経済学の、しかもほとんどが、不用意に経済学部に入ってしまった文系学生の多くがもっとも忌み嫌う「ミクロ経済学」の内容という教育番組が、NHKの教育テレビでなく「総合テレビ」で、しかも、深夜0時すぎでなく、23時から放送されていて、おまけに再放送は、ふつうに夕方に「総合テレビ」で流れるんですよ。私も関係者なのに、いまだに信じられない状況です。くどいようですが、シリーズものの教育番組が、教育テレビでなく、総合テレビで放送なんですからね。そもそも、シリーズものの経済学教育番組(経済教育じゃありませんよ、あの小難しい経済「学」の教育番組ですよ)なんて、これまで放送されていないでしょ。教育テレビでやってても、超画期的だったのに……あっ、いくらなんでもくどいですね。

ということで、何度も辞退しながらも断り切れずに、その実現のために、いろいろな意味で生活と他の仕事と、何よりも健康を思いっきり犠牲にした監修者兼出演者の私が、少々いいかげんなことを話していても、許していただけると助かります。そもそも、この番組に関係した本だけで、今年5冊も出ていて、年内にあと2〜3冊は出る予定なんです。それらの執筆や監修もしているんです。しかも、海外でも出ます(昨日も、台湾版の表紙などをNHK内でチェックしていました)。
応用ミクロ経済学などの専門家で、もし内容に文句がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ、ただ文句をいうのではなく、「オレ(ワタシ)のほうが監修も出演もずっとうまくやれる」といって、NHKに売り込んでください(特に東京方面の方が理想的で、なおかつ、本当はNHKの制作スタッフは美人経済学者を希望されていますので、心当たりの方はどうぞ)。売り込みに成功された場合には、私が心のなかでたいへんに感謝いたします(うれしくないでしょうが……)。ただし、このスタイルの番組が、来年度も続けられるとは思えないのですが……。その辺りは自己責任ということで。

今回の「ロックイン」というキーワードは、私とNディレクターとの長時間に及ぶ相談の果てに、リストから落としたにもかかわらず、プロデューサー判断で復活したもの。つまり、一般受けがいいキーワードと考えられたわけです。そして、だからこそ、初回のキーワードになっています。
みんな、ポイントカードなどの話が好きなわけですね。私が初回に推していたのは「スクリーニング」でしたが、これは第5回(後半戦の頭)に回りました。このパターン、じつは第1シリーズと同じ。「価格差別」を初回に推したのに、プロデューサー判断で「サンクコスト」が初回になり、私が初回に推したキーワードは、全体を半分に分けたときの後半のひとつ目に来るという意味で……。
じつは、どれが初回でもいいんです。番組的にはね。ところが、番組ガイドブックの執筆にとっては、たいへんな問題でした。本での説明の都合なんて考えていないキーワードの候補とその順番が決まったあと、他の仕事との関係で考えると、執筆に10日も使えない状況で、番組ガイドブックを書く必要がありました。しかも、レイアウト上の制約がメチャクチャ多い。しかも、この第2シリーズは、特に、あっちへ行ったり、こっちへ来たりのキーワード選択で……。すみません。番組そのものの言い訳でなく、別のグチになっていました。
本の編集にご協力いただいた「一穂社(いっすいしゃ)」のお二人にたいへん感謝しております。本が何とか期限内に書けたのは、いろいろな方のご協力があったことと、私がDTPソフトのInDesignを使って自分で本のレイアウトを決めて、ページの増減などを調整しながら原稿を書けたことが大きかったと思います。
今回の番組ガイドブックについて、グリーンを使った2色刷にしたのは、まるっきり、私の好みです(せめてこれぐらいは好きにさせてくださいよーって感じです)。
おかげでいい経験ができました。もっと勉強して、InDesignを使いこなせるようになりたいと思っています。何といっても、私の本業は「著述業」ですので(ま、ふつうの著者は自分でInDesignを使いませんけどね)。
1年前に、DTPについてヒントをくださって、私が今年からMacユーザーになるきっかけをつくってくださった、デジカルのデザイナーの萩原さん(本や番組に出てくる私のマークをデザインしてくださった方です)に感謝します。InDesignが何とか使えそうな状況になっていなければ、この仕事、どうやっても無理でした(それなら、簡単に番組の監修・出演を降りられたということでもありますが……)。

なお、この初回での私の解説コメントは、かなり「そのキーワードをきっかけに、自分がいいたいことを好きに話した」っていう感じになっています。私としては、これが主張できないのなら、「何のために私が経済学番組の監修をしているかわからないじゃないか!」ぐらいのつもりで、一番いいたいことを主張しました。
あと、スタッフが最初は「タイプライターの配列」で説明しようとした話について、それは第1シリーズの最終回(ネットワーク外部性)で出てきた話だからといって、別のものを考えて、提案しました。それが「電源コンセント」。つけるのは簡単だけど、別の方式のものに変えるのはたいへんという点がいいと考えました。ふだん教えていない分野の話だから、すぐに例が思いつかず、本当にたいへんで……あっ、またグチになってしまいました。じつは、この「言い訳」のネタに困っているわけですね。初回なのに……。

そうそう、この回はスタッフが考えたクイズにやたらダメ出ししましたね。最初の案には明らかに問題があったり(スタッフの用意した正解がどう考えてもまちがっていたり)して、けっこう苦労したはずです。私もあまり思いつかず、完全にまかせていましたが、ダメ出しは当然するわけです。
クイズに苦労した理由ははっきりしていて、たいていのモノやサービスで、どこかの企業が、顧客のロックインを誘うしくみが内包された売り方をしているわけです。そう考えると、初回としては、きっといいキーワードだと思います。
そもそも、経済学の素人集団が自分たちで「使っておもしろい経済学キーワード」と感じたものを選ぶのが、この番組の基本です。私が重要と考えて提案したキーワードのほとんどは、第1シリーズでやっていますから、あとは制作スタッフの意見でお好きに選んでもらったのが、結果としてよかったと思います。
特に、この番組への「ロックイン」が生じてほしいという願いが、初回のキーワード選択には込められていると思います。
さて初回視聴率はいかに? ……私は視聴率をさほど気にしなくていい立場なので、この点だけは気楽で、むしろ、番組関連本のうち、第1シリーズのDVDブックの売上を一番気にしています。すごくお得なDVDブックなので、ぜひよろしくお願いいたします。ちなみに、どれほどお得かとか、なぜお得なのかについては、ちょうどいいネタとして、番組ガイドブックのなかで説明しています(……結局、番組ガイドブックの宣伝もしていますね、すみません)。
次回からは、もっと短く書きます。今回は初回特別限定版でした(意味不明ですね)。

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2009年10月 7日 (水)

『出社が楽しい経済学』裏話&番組ガイドブック出版のお知らせ

昨日、NHKで『出社が楽しい経済学』の第3・4回の試写があり、非常にいい出来映えで感心しました。その際に、プロデューサーから「ブログに書いてもらってもかまいません」といっていただいたネタをひとつ。
第1シリーズでの人気者のひとりが、語学番組風にキーワードを連呼していた外国人女性。名前は表に出ていませんでしたが、通称「ガブちゃん」と呼ばれていた女性でした。それで、第2シリーズも彼女が登場すると思っていらっしゃった方々に、残念なお知らせです。
じつは、ガブちゃんはいま日本にいないらしく、NHKの制作班としては探したけれどもあきらめたということのようです。ということで、別の複数の外国人が登場します(ときに男性の回もあります)。お楽しみに……。

『出社が楽しい経済学』そのものは、
10月8日(木)23時スタート!
ですが、その前後に宣伝番組もあり、宣伝番組のほうの告知をさせていただきます。

初回放送がある10月8日(木)の17:05〜18:00の間の「ゆうどきネットワーク」のなか、ほぼ終わりに近い時間帯(17:50前後)に、『出社が楽しい経済学』の宣伝が入る予定だそうです。この番組の企画を考えたNディレクター(私のブログや著書によく登場する方ですが……)が、生出演で番組の魅力を語るそうです。

もっとも、現在接近中の台風で、上記の宣伝の時間や、そもそも『出社が楽しい経済学』の8日夜の放送自体が吹き飛ばされてしまう危険性が十分にある(その確率はかなり高そう)というのが、NHKのスタッフの認識でした。かなりの大型台風ですし、日本に上陸となれば、場合によって番組の放送がなくなるのも仕方がないと思います。

もうひとつの宣伝番組は、いつもの『見どころNHK』です。
10月22日(木)22:45〜22:55放送予定(いつもの時間帯ならこの時間のはずですが、実際の時間帯は、当日のテレビ番組表でご確認ください)
……ってことは、『出社が楽しい経済学』第3回の放送のちょっと前に、『見どころNHK』での宣伝が入ることになります。
今回は、番組の売り物であるドラマを演じてくださっている劇団スーパー・エキセントリック・シアターの番組レギュラー・メンバーから、男性陣(役名でいうと、小山内くん、郷田先輩、島課長、そして居相田係長)が出演してくださるとうかがっています。そう、今回は私が出演しなくていい! ……正直、助かりました。緊張するんですよね。視聴者にとっても、小山内くんや居相田さんが出てくれたほうがいいでしょうし。私も楽しみにしています。

なお、番組ポスターが、NHKの西口の入口から続く廊下に実際に貼ってありました。いろいろな番組の大きなポスターが何枚も並んでいて、もちろん、入口に一番近いところには、まず朝の連ドラ『ウェルかめ』のポスターが3枚。そして、そのつぎの入口から4枚目に、何と『出社が楽しい経済学』のポスターが貼ってありました。
昨日、試写を終えて、西口の外のNHKの駐車場の片隅に立つプレハブ(本などでご存じの方もいるでしょうが、番組の制作班の部屋は、NHKの建物内にあるのではなく、外のプレハブにあります)に戻ろうとして、ポスターに気がつきました。番組スタッフも初めて気がついたようで、まだ貼られたばかりのようでした。
ひとりのディレクターの記憶によれば、朝の連ドラの『ウェルかめ』のポスターが4枚あったはずとのことで、その1枚をはがして、その代わりに貼ってもらったのではないかという話でした。
とにかく、すごい位置に貼ってあります。……ただし、NHKの内部に貼られたポスターですから、出演者などにならないと、部外者はみられませんが。子ども向け番組の出演者の親子がそこから入っていくのをよくみかけますから、そういった方々がみるかもしれません。

今回の第2シリーズでも、番組ガイドブック『出社が楽しい経済学・2』(NHK出版)が出版されます。初回放送の前後に東京都内の大きな書店には並ぶ予定とのことでした。今回の本には、前回の『出社が楽しい経済学』(NHK出版)にはなかったコーナーがいくつもあります。全体の感じは前回の本と同じようにするという制約があったものの、今回の構成やレイアウトは、私とNHK制作班が主導して考えたからです。私が強く希望して、「文献リスト」も入れてあります。素人目線でみた参考文献リストという意味と、実際にスタッフが番組制作のネタ本としたものの紹介という意味があります。その他、どんなものが追加になったのかについては、実際に『出社が楽しい経済学』と『出社が楽しい経済学・2』の2冊をお読みいただいたときのお楽しみということで……。

なお、ポスターや本の表紙の画像は、すでに掲示していますので、今回は省きました。
とにかく、番組はいよいよ明日放送予定。台風に吹き飛ばされないことを祈っていますが、諸葛孔明ではありませんので、台風の進路はどうにもなりませんね。

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2009年10月 3日 (土)

『出社が楽しい経済学』いよいよNHK総合テレビで第2シリーズ

ポスターのデータを受け取りましたので、貼っておきます。

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私は写っていません(写る気もないし)。でも、出演者として劇団SETの前に私の名前が出ています。ふつうにみたら、この「吉本佳生」ってどんな人か、不思議ですよね。そもそも、実際の出演時間も長くないし。

番組の本も出ます。見本ができたのですが、私はまだみていません。昨日、まだゼミ担当の非常勤講師として研究室がある南山大学に、本は届いていると思いますが、昨日は朝から夕方まで、中部電力の研修所で「ファイナンス基礎(ポートフォリオとデリバティブの基礎からやや応用の話)」の講義をしていましたので、本を受け取れませんでした。
本の帯に、くわしい放送予定がありますので、それも合わせて、本の表紙画像も貼っておきます。

ちなみに、中部電力の研修では、MacBookAirでのkeynoteのプレゼンをiPodでコントロールするという方法を採用。何度かリハーサルしてあって、非常にうまくできたのですが、思わぬ難点を発見。長時間のプレゼンをやるには、iPodのバッテリーがもたない!
途中からは、パソコンにつないで電源供給をしながら使うしかありませんでした。2時間程度なら楽々バッテリーは保ちそうですが、7時間超の講義での連続使用は無理……って、当たり前ですよね。
ただ、ふつうの講演なら、iPodとパソコンを併用してkeynoteのプレゼンをコントロールする方法は、すごく便利です。時間管理が完璧にできるのと、アニメーションの誤操作がなくせるのが、すごく大きいからです。

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2009年8月31日 (月)

10月からNHK「出社が楽しい経済学」第2シリーズ放送開始

昨日、NHK「 出社が楽しい経済学」の私の解説コメント(補修講義)を撮影。……たいへんでした。全8回(予定)のうち、4回ぶんを撮りたいと思っていて、でも、最低限必要だった2回ぶんだけ。
放送予定ですが、番組ホームページでも出ていますので、ここでも告知します。

出社が楽しい経済学・第2シリーズ
放送スタートは  今年10月8日(木)23時から(約30分)
原則として  毎週・木曜23:00〜23:29

新シリーズの情報をさらに知りたい方には、チーフプロデューサーのインタビューがたっぷり読める、つぎのホームページをご覧ください。

NHK週刊!ハタラキング 特ダネファイル第九号(FILE NO.10)

本(番組ガイドブック)も、がんばって、放送開始に間に合うように執筆しています。
8月は、家族旅行にも仕事を持ち込み、ただただNHKのこの番組のために働いた感じです。
一方で、デリバティブ汚染の問題での依頼もつぎつぎにやってきます。すべての依頼をお引き受けできるわけではありませんが、あといくつかの依頼は引き受けたいと思っていて、しかも、他の本も書きたいので……。
なんとか、がんばります。

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2009年8月 6日 (木)

「出社が楽しい経済学」:特集の視聴率と、第2シリーズの開始時期とキーワード選択について

先ほどNHKのディレクターが昨夜(8月5日22時〜)の「出社が楽しい経済学・特集」の視聴率を教えてくれたのですが、インターネット上の情報で、それより前に知っていました。……ネット(ブログ)情報、恐るべしですね。
首都圏で4.9%、関西圏で3.6%のようです(NHKから教わって確認したのは首都圏の情報だけです)。
先週の同じ枠で放送されていた「ファミリーヒストリー」は、もっと高かったこと、また、試写などの際に制作スタッフが掲げていた目標よりは低かったことを考えると、残念な気もしますが、教育テレビでやった第1シリーズは0.5%ぐらいが普通でしたから、4.9%は大健闘だと思います。視聴者が10倍近くに増えたのは、さすがに総合テレビの威力だと思います。

昨日、番組放送直後にアップしたブログに対して、
「総合テレビとなると、視聴率が問われる」
という趣旨のコメントをいただきました。もちろん、NHKの制作スタッフは視聴率をすごく気にしています。そのあたりは民放と変わらない感じです。
ただ、NHK内部の事情を知ってみると、視聴率は番組制作のうえで最重要ではないようにみえます。それは、あまり格好いい意味でなく、むしろ、「組織」として当然のことなのですが、制作の際に一番重要なのは、NHKにおける「内部評価」という感じです。よく考えれば、どの放送局も同じように「内部評価」を気にしているはずですが、民放なら、「視聴率」と「内部評価」がほぼ等しい(あるいは、密接にリンクしている)ということでしょう。
ところが、いまのNHKの場合は、必ずしも「視聴率」が「内部評価」につながらないようです。この点は、極めて経済合理的です。民放はスポンサーを得るために「視聴率」が重要になりますが、いまのNHKは追加で稼ぐビジネスにも積極的ですから、そういった部分につながりやすい要素が、視聴率よりも重視されたりするようです。……「追加的な利益」を重視すべきだという話は、まさに経済学の基本原理にそっています。
実際に、「出社が楽しい経済学」が総合テレビに進出するようになったのは、「視聴率が取れそうだ」との判断ではないと思われます。以前書いたように、ホームページのアクセス数や、NHKオンデマンドでの視聴数や、関連書籍の売れ行きが評価された部分が大きいのです。

さて、昨夜の番組最後にあった、第2シリーズについての告知では、「秋」とはっきり出ていましたね。そう、この秋から第2シリーズが始まります。そして、上記の事情により、第2シリーズの開始に合わせて番組ガイドブックを出版することが求められています。だから、私はいますごく大変なのです。
これも以前に少し書いたことですが、私は第2シリーズに出演する経済学者は別の人にするほうがいいと真剣に思っていました。その理由はあとで書きますが、実際には、私が引き続き担当することをNHK側が望んだため、仕事を断ることが苦手な私は、そのまま監修・出演という仕事を続けることになりました。
NHK側が私を選ぶ理由も、これまでの話からわかります。番組ガイドブック(中国・韓国・台湾での翻訳出版も進行中)やコミック版やDVDブックなどの出版展開が、この番組の評価としてはすごく重要で、そうなると、第2シリーズの内容がどうかということとは別に、私が適任となるわけです。
一方で、昨夜の告知では「最先端の経済学用語が飛び交う」と表現されていましたが、「最先端」はかなり大袈裟です。最先端は大袈裟な話ですが、より基本的なキーワードは第1シリーズで使っていますので、第2シリーズでのキーワード選択は大変でした。
第1シリーズが「ミクロ経済学」を中心にしていましたので、第2シリーズは「マクロ経済学」や「金融」などを中心にするということなら、私の専門に近づきますから、やりやすかったのですが、そうなっていないのです。
それで、私が研究・教育してきた分野からむしろ遠くなったキーワードが並びましたので、私は「他の経済学者に出演してもらうほうがいいのでは?」と主張したわけです。スケジュールもかなり厳しいのですが、内容的にも、私には厳しい(適切な事例や説明を選ぶのにどうしても時間がかかる)というのが、第2シリーズについての本音です。
逆に言えば、NHKの番組制作スタッフは、「総合テレビに進出したのだから、もっと一般向けにレベルを落として……」なんてことは、ほとんど考えていません。第1シリーズよりも少しむずかしいキーワードも出てきます。「同じ難易度で、ときには、前より高度な内容もやる」という意気込みです。「ドラマのおもしろさ(ふざけ具合)などの、前のおもしろさ」も維持されるはずです。
ただ、そうなると、制作側の難易度は格段に上がっています。そのぶん、スタッフも増やしてもらっていますし、いろいろと便宜が図られているようです(第1シリーズの打ち合わせは、たいていがNHKの建物の外でしたが、第2シリーズの打ち合わせはほとんどがNHKの建物内の会議室になっていたりします)。
問題は、私の仕事は相変わらず私がやるしかないということで、専門分野とのミスマッチと合わせて考えると、第2シリーズのアキレス腱(最大の不安要素)は私ということになります。……冷静に評価すると、どうしてもそうなります。
でも、嫌がる私に無理矢理続けさせたのはNHKのほうなので、「私は私にできることをがんばるだけ」と考えようとしています。本当は、仕事においては「努力より結果が圧倒的に重要だ」と考えるタイプですが、この第2シリーズの仕事に関しては、「ベストの努力をすることが大切」と開き直ろうとしています。しかし実際には、総合テレビで失敗すると目立ちますから、私にとって、第2シリーズで失敗する(専門家としてのミスをする)ことのリスクは大きく、やはり気が重い状況です。

さて、ブログはしばらく更新が滞ると思いますが、上記のような事情ですので、どうぞお許しください。
がんばります……フリーランスなんだから、仕事があることを喜んで、必死に働くべきですよね!

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2009年8月 5日 (水)

「出社が楽しい経済学(特集)金融危機を斬っちゃうぞ」監修者の言い訳

1月から3月まで、番組放送後に書いていた「監修者の言い訳」を、一応、今回の特集についても書きます。「一応」という表現を使っているのは、今回はテーマが「金融危機」で、私にとってはさほど不満がない内容になっているからです。つまり、言い訳することがさほどないのです。
そこで言い訳というより、内部情報(いわゆる裏話)を少し披露しようと思います。
なお、クイズの解説は番組ホームページに掲載されていて、こちらでは書いていませんので、番組ホームページをご覧ください。
『NHK・出社が楽しい経済学・番組ホームページ』はコチラ

第1に、43分の番組ですが、撮影されたドラマ部分を全部そのままつなげたら、1時間になったそうです。そのため、ドラマが大幅にカットされています……残念! 個人的には、私が話をしている部分を全部カットしてでも、ドラマをできるだけ残してほしかったのですが、そうはいかないようでした。
まず、冒頭の部分が大幅にカットされています。本当は、小山内君の帰郷から本題に入るまでに10分程度ドラマが続いたとのこと(私は元の台本を読んでいますので、確かにそうだろうと思いました)。それはいくらなんでも許されませんから、思いっきり短縮されています。
また、最後にもうひとつエピソードがあったのですが、これも丸々カットされています。小道具に「金融商品のパンフレット」が出てきますので、その内容を私がチェックしたりしたのですが、完全にカットになりました。話はすごくおもしろいのですが、仕方がないですね。
削除された部分も、ドラマの撮影はおこなわれています。そう思うと、かなり残念ですが……。

第2に、最初に試写でみたとき、「総合テレビの夜10時からの枠で、ここまでふざけたドラマがよく許されたなぁ」と感じました。
井戸から居相田係長(経済学の達人)が登場するシーンは、あの有名な映画のパロディですが、「よくまあ、都合よく井戸があったものだ」と思いました。じつは、昔の暮らしを再現する施設のひとつとして、井戸の「枠」だけがあったのだそうです。つまり、穴は掘られていないのです。だから、あのなかから居相田係長が出てくるシーンも撮影が楽だったようです。
私が一番好きなシーンは、ドラマ「ハゲタカ」のパロディをしているところで、投資銀行の人間が旅館にクルマで乗り付けるシーンは、一瞬、ドラマと同じ旅館で撮ったのかと思いました。

第3に、当初設定したキーワードは多すぎたと、私もNHKのディレクターも感じていますが、まあ仕方がないですね。元は5つのキーワードで、その段階で私は「3つぐらいじゃないと無理では?」と言っていましたが、がんばって5つのキーワードを入れたドラマが撮影され、最後の1つは編集時にカットされました。
最初の2つも、「インセンティブかモラルハザードか」どちらかひとつにすべきだったと、みんながあとでそう感じましたが、撮影済みのドラマなどの関係で、どちらを削ることもできませんでした。
それで、解説のテンポがかなり早いのですが、今回の「特集」は「出社が楽しい経済学・第1シリーズ」のカタログのようなもので、この回だけでは内容の理解がむずかしいことを覚悟しています。
番組をみた人に訴えたいポイントは、「百年に一度」と言われる今回の金融危機ですが、そんなに特別な現象ではなく、基本的な経済学の考え方で説明できる現象だということ。だから今回の金融危機は、身近な生活や仕事のうえで生じる問題と同じ本質を持っているということ。この点が何となくわかってもらえればいい。この特集のコンセプトはここにありました。

最後に、私が解説をしているときの服装ですが、ネクタイは1年半前に卒業したゼミ学生たちからプレゼントしてもらったもの。サスペンダーは、昨年度の1年生のゼミ学生たち(現在は2年生)からプレゼントしてもらったものです。せっかくの機会でしたので、できるだけ学生(卒業生)からもらったものを身につけました。
1月から3月の第1シリーズのなかでも、2006年春に卒業したゼミ学生からもらったネクタイをしていた回があります。贈った側が覚えているかどうかは微妙ですが(……たぶん覚えていないと思いますが)。

とにかく、「マネー××主義」よりはずっといい番組になったと自負しています(本当はあちらの番組への不満をいろいろと書きたいのですが、この程度の主張にとどめておきます)。監修者なので、どうしてもひいき目にみてしまうことをお許しください。

第2シリーズについての告知は、いずれ別の機会に。今月のこれからは、第2シリーズ用の番組ガイドブックの執筆、ドラマ台本や解説CG台本のチェック、私の解説部分の原稿用意や撮影といった番組関係の仕事と、春先に書き終えているはずだった本の執筆の仕事で埋め尽くされそうで、家族旅行で休む期間を除いて、ムチャクチャに忙しいことが予想されます。
ということで、またブログの更新が滞りそうですが、遅くとも9月後半には、がんばって数日毎の更新ができるようにします。こんな風に書くと、第2シリーズの開始時期が何となくわかってしまうかもしれませんが……。
では、みなさまに充実した「出社が楽しい経済学・第2シリーズ」をお届けするために、また、できれば秋には新作の本をお届けするために、明日からまたがんばります(この特集の視聴率が気になりますから、視聴率がわかったところで、お伝えするかもしれません)。

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2009年5月28日 (木)

NHK「出社が楽しい経済学」総合テレビ進出と、大学の巨額損失報道

ブログがまったく更新できずに申し訳ありませんでした。
たぶん、このあとも更新がなかなかできないと思いますが、その事情説明も兼ねて、ご報告などをします。本当は、ブログを書いている時間はないはずですが、昼食を抜いてその時間に書きますのでお許しください(……原稿を待っていてくださる方々へのお詫びです)。

すでに下記の番組ホームページで予告されていますが、「出社が楽しい経済学」が総合テレビに進出します。
http://www.nhk.or.jp/shussya/
1時間弱の枠で、「特集」をやるのですが、第1シリーズの内容を生かしながら、新しいドラマなども入れて、「金融危機」をテーマにします。これ以上はまだ書けないのですが、他にもいろいろと頼まれていて、しかも断っているはずが断り切れていなくて、相変わらず(いや、前よりひどくなりそうですが)NHKに酷使されそうです。何度かNHKのディレクターに「私に(過労で)死ねっていうことですか?」と言いましたが、その都度、特に反論もないのが怖いです。この辺りの愚痴はいずれ放送の前後に……

今朝の日経に大学の巨額損失がまた出ていました。
本にもブログにも、私はかなり前から慶応の話を書いていたのですが、大手メディアはあまり取り上げておらず、それが今回はしっかり取り上げていたので……数日前に書き上げた原稿を修正する必要が生じました。そう、この辺りの話を原稿に書いているのです。それをどう公表するかについては、いずれ正式に決まったところで報告します。
なお、今回は上智大学の損失も出ていましたが、先週(ちょうど1週間前)のゼミの時間に「上智は損失が大きいはず」と学生に教えていたので、このあとのゼミで「ほらね」と言おうと思います。ゼミ生のなかには、上智大学と南山大学の対抗戦のために来週末に上智大学に行く運動部員がいますので、その話のついでに先週教えていたのです。
私が上智の損失発表を知ったのは今朝ですが、何ヵ月も前から、上智と某関西有名私学については損失が大きいはずと予想していて、周囲にはそう伝えていました。
経団連の損失も公表前から予想していましたし、他にも……
とにかく、この辺りはいずれまた書きます……そう書きながら書いていないことがいかに多いか! すみません。本当に申し訳ございません。

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2009年3月28日 (土)

「出社が楽しい経済学」の放送『第12回(最終回) ネットワーク外部性』監修者の言い訳

最終回でした。とはいえ、感慨とかはない……なぜかどんな感情もわいてこない感じです。不思議ですね。
あと3日で、大学教員生活を終えますが、それについての感情もほとんどないのです。少しあるとすれば、「うれしい」と「不安だ」という感情ですが、それもさほど感じないのが本当なのを、周囲の大学関係者には大げさに「すごくうれしいです!」とか、「けっこう不安ですよ!」と言っています。ほぼ無感情だと言うと、いかにも大学教員という仕事を軽くみているようで……社交辞令ということですね。
自分が大学教員を辞めることについては、はっきりと、息子が3月で幼稚園を卒園したことよりも、ずっとずっと、どうでもいいことという感じです。3年も回り道をして入った大学院で5年間も大学教員になる修行のようなものをして、15年間続けた大学教員生活ですから、修行期間などをふくめて20年以上の仕事と決別することになりますが、そんな過去の時間やおカネはまさに「サンクコスト」ですから、すっぱり無視します。私は、経済学の基本原理にしたがって行動するのが、けっこう好きなんです。
話を番組に戻すと、この『出社が楽しい経済学』について「やることはやった!」という達成感はあるのです。ただ、実際の収録・編集・執筆などで私がやるべきことは、ほとんど11月末までに終わっていて、残りの作業が12月から3月上旬までずるずると続いた感じでした。そのため、私のなかでは過去の話になっているのです。ということで、やはり「サンクコスト」に対しては感情がわかないということです……よくも悪くも、経済学が身についています。

番組ガイドブックをお読みいただければわかりますが、「ネットワーク外部性」は「規模の経済性」の延長線上にあるような概念で、だから私の好みとしては、先に「規模の経済性」をキーワードとして取り上げたかったわけです。もう一度、構成を最初から考え直しても、やはり、私は規模の経済性のほうを選ぶでしょうね。そのなかで、経験の経済性、範囲の経済性、ネットワーク外部性の話も入れればいいという考えです。
でも、番組的には、ネットワーク外部性で終わって大正解なのは十分に理解しています。最後の3回は、何となく将来のことを考える内容になっていて、だからネットワーク外部性が最終回に入りましたが、規模の経済性に代えていたら、もっと前に入れていたでしょう。
私はこの番組は一定の成功をしていると信じていますので、成功を前提にお話しますが、この番組が経済学教育の面で一番成功しているところは、「経済学の素人がおもしろいと思う内容を、経済学の素人がおもしろいと思う順番で、経済学の素人がおもしろいと思う題材(見せ方)で映像化した」ということに尽きる気がします。
成功のカギは、もともと経済学の素人だった制作スタッフが急速に経済学のエッセンスを学んで、自分たちのものとして修得したことにあります。もちろん、かなりきちんと理解しても、番組制作となると、教える側に回るのですから、専門家からみて細かなまちがいをたくさんしてしまいますが、それは専門家がチェックして修正すればいいことで、実際に、経済学の専門家からみていろいろと問題が残っているとすれば、それはチェックした専門家=私の失敗です。制作スタッフのみなさんの経済学修得度は、非常に高いと思います。きちんとした講義を受けたわけではないし、他にいろいろと仕事があって忙しいなかで何冊かのテキストを自力で読み、短期間で勉強された結果とは、とても思えないほどです。
一番のポイントは、制作スタッフがみんなで経済学の勉強をしながら番組の制作をすることで「ネットワーク外部性」が強力に働いたということでしょう。この辺りの話は、番組ガイドブックにくわしく書かれています(ディレクターによる番組裏話や、最後のプロデューサーのお話をお読みください)。
だから、最終回が「ネットワーク外部性」だったのは、制作スタッフにとっては必然……そこまでわかっていても、私ならやっぱり「規模の経済性」にするよなぁ……くどいですね。

さて、このあとの展開ですが、いくら私でも、NHKに無断ですべて書いてしまうわけにはいきません。書けそうなことだけ書きます……本当はまずいことも書きそうですが。

1.DVD化の話は、まだ何も決まっていません。強力なライバルがないので、長期的には一定数が必ず売れると思うのですが、短期的な結果がよくわからない状況では、実現はむずかしいということもわかっています。でも、何とか実現されることを願っています。

2.番組ガイドブックは海外展開を模索中です。くわしくは書けませんが、私の『スタバではグランデを買え!』がすでに中国・韓国・台湾で翻訳出版されていて、他にも翻訳出版されているものや、その予定のものがあります……あとはご想像にお任せします。

3.集中再放送があります。しかも「総合テレビ」で!……深夜ですが。
NHK番組表
4月1日深夜(正確には翌4月2日)に3回ぶんが、NHK総合テレビで放送されます。
4月2日1:50〜 第8回「裁定」
4月2日2:21〜 第9回「囚人のジレンマ」
4月2日2:51〜 第10回「共有地の悲劇」

思ったよりもずっと視聴者はたくさんいて、しかも、私たちの想像をはるかに超える高評価を得たようです。視聴率やホームページのアクセス数など、いろいろな情報をもらってはいますが、それらは安易に載せられませんので申し訳ありません。でも、ホームページのアクセス数がNHK内部での番組の評価につながっていることは述べておきます。クイズの答えや見逃した回の内容などを番組ホームページでみてくださった方には、お礼を申し上げます。みなさんのクリックが、総合テレビでの集中再放送につながりました(これは私がそう思っているだけですが)。

私が「出社が楽しい経済学」の話をブログに書くのは、さて、これで最後になるのか、それとも、また別の機会が来るのか? いまは何とも言えませんが、DVD化のお知らせなどができるときが来ることを願っています。
3ヵ月間、番組とともにこのブログをみてくださったみなさまに、改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

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2009年3月21日 (土)

「出社が楽しい経済学」の放送『第11回 割引現在価値』監修者の言い訳

今回は、私にとっては因縁の「割引現在価値」。すでにこのブログで紹介したように、「出社が楽しい経済学」という番組の企画が生まれた経緯に深く関係して、それゆえに、ミクロ経済学のキーワードがほとんどのこの番組で、唯一、マクロ経済学あるいは金融論(ファイナンス論)のキーワードといえそうなのが(本当はミクロ経済学にも関係がありますが)、今回の割引現在価値です。
しかも、この番組の放送中に、これまたすでにブログに書いたように、兵庫県朝来市の基金運用問題に関係することになりました。その話を聞いたとき、よほど、この第11回の番組試写版のDVDを朝来市に持って行き、市議会議員の研修会で流そうかと思ったほど、その内容にピッタリあっています。
金融商品の問題を考えるうえでは、この割引現在価値の回の内容は、本当に重要なものだと思います。
なお、金融商品や資産運用に関して私が過去に本を書いたときには、たとえば『金融工学 マネーゲームの魔術』にしても、『金融広告を読め』にしても、『金融商品にだまされるな!』にしても、『金融機関のカモにならない! おカネの練習問題50』にしても、これでこのテーマの本は当分書かなくてもいい(これで最後にしよう)と考えて書き終えていました。しかし、最近、考えを改めました。
これからも当分、そういったテーマの本を書きます。いつ、どんな本を書くかは、ある程度書いたところでこのブログで紹介しますが、とにかく、金融商品に関する本をしばらくは書き続けるしかないと覚悟しました。本当は、あまり書きたいテーマではないのですが、仕方がありません。がんばりたいと思います。

次回はいよいよ最終回!
じつは、つぎの第12回の番組最後のクイズは、本当はすごく簡単な問題になっていました(第3回のクイズと同じぐらい簡単でした)。ところが、Kプロデューサーが「もっとむずかしく!」と要求したため、Nディレクターと私が頭を悩ませる結果になり、数日悩んだ結果、私がひねり出した問題が、最後のクイズとなります。直感で正解する人は意外に多いと予想しますが、きちんと考えようとすると、かなりむずかしく感じるはずです。次回のクイズについては、最後でもありますし、ぜひ、じっくり考えてみてください。

さて、約1年前にこの企画をNディレクターから聞いたとき、「経済学の基本をシリーズで教える教育番組なんて、これが最初で最後でしょうから、どんなかたちであれ協力します。まさか、日本でそんな番組が制作されるとは思っていませんでしたから」と答えました。それから約1年間、特に昨年9月から今年2月までの半年間は、本当にこの番組のために働きづめだった気がしますが、終わるとなると、少し寂しい感じがします。とはいえ、やっと安心できるという気持ちのほうが大きいです。やっぱり。
番組の放送後にこのブログをお読みいただいていた皆様には、深く感謝します。
次回のキーワードは「ネットワーク外部性」です。これは私の提案ではなく、NHKの番組制作スタッフが強く推したもの。でも結果として、非常にいい選択でした。最後がこのキーワードというのも、すごくいい終わり方です。最終回を、ぜひお楽しみに。

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2009年3月14日 (土)

「出社が楽しい経済学」の放送『第10回 共有地の悲劇』監修者の言い訳

昨日、コミック版刊行のお知らせを書きましたので、今日のブログは短めに。
今回の「共有地の悲劇」では、私が話す2つの解説コーナーの後半をどのような内容にするのか、かなり悩みました。じつは、当初は「市場原理主義批判に答える」といった内容を考えて用意していました。それで、収録時に土壇場で変更したのですが、もともと話そうとしていたのは、つぎのような話。

市場や価格の役割を重視して、経済活動はできるだけ自由におこなわれるべきだと考える経済学者は、市場や価格の働きのすばらしさを信じているという意味で、市場原理主義と呼ばれたりします。その意味では、私も市場原理主義者です。
ただし、市場の働きを重んじる経済学者は、どんな経済活動でも自由にさせろ、とは言いません。この点を誤解している人も多いようです。
ポイントは、いつもインセンティブにあります。個人や企業が自由な行動をする際に、社会全体の経済効率を高めるようなインセンティブが働いている場合には、できるだけ、規制などをせずに、自由にやらせろと主張します。しかし、社会的に望ましくない行動を取るようなインセンティブが働いていて、インセンティブが歪んでいるときには、それを修正するための制度や政策が必要だと、市場原理主義と呼ばれる経済学者も考えます。
環境問題のような、共有地の悲劇では、もちろん、インセンティブの修正が必要です。修正の際に、価格の働きを利用するやり方もあります。たとえば、誰のものでもなかった共有地に所有権を設定すると、その所有権には価値がありますから、価格がついて売買されるようになり、適切なインセンティブが働きやすくなります。有害な排出物を排出する権利を売買する、排出権取引とか排出量取引と呼ばれるやり方がありますが、これも、本来は誰のものでもない環境に、所有権を設定しているわけです。
こういった解決策を提案する経済学者は、大きな問題を解決するには、多くの人や企業のインセンティブに頼るのが、コストを小さくして効果を大きくする方法だと考えています。

ここに引用した原稿でそのまま話をして収録していたら、「私も市場原理主義者だ」と堂々と宣言することになり、いまは、市場原理主義者という言葉は非常に悪いイメージで使われていますから、どういった反応を引き起こしたのか、ちょっと興味がありました。その点では、上記の原稿のように話したかったのですが、せっかく経済学に興味をもってもらうための番組をやっているので、私がどんな主張をもっているかを説明する時間があれば、その代わりに、基本的な内容の説明をすべきだということになり、実際の番組で流れた話になりました。

次回は「割引現在価値」です。あと2回です。
小難しそうなキーワードですが、おカネの運用で失敗しないためには、ぜひ知っておくべき内容です。あと2回だけですから、ぜひとも、2回ともみていただければ幸いです。

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2009年3月13日 (金)

出社が楽しい経済学、集中再放送+コミック版刊行のお知らせ

すっかり『出社が楽しい経済学』の応援ブログになっていますが、4月になったら、番組も終わり、私も大学を辞めていますので、別のネタを書くことにして、3月中は割り切って番組ネタを続けます。

3月14日(土)の15時から17時まで、番組の集中再放送があります。第1回のサンクコスト、第2回の機会費用、第3回の比較優位、第7回の価格差別、以上4回ぶんをまとめて放送するようです。
http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/index.cgi?area=001&date=2009-03-14&tz=afternoon
もちろん、夜の23時には、最新回(第10回 共有地の悲劇)も放送されます。

同じ3月14日(土)には、宝島社からコミック版も出版されます。私の手元には、昨日(3月12日に)届きました。
『マンガでわかる! 出社が楽しい経済学』
http://tkj.jp/book/book_20160601.html
全12回の放送のドラマ内容が、マンガで再現されています。解説も、マンガの進行を理解するためのポイントだけを少しずつ押さえるかたちで、入れてあります(解説をたっぷり読みたい方は、NHK出版からすでに出ている番組のガイドブックをどうぞ)。
20160601_20090310195845
これを読むと、未放送の回も掲載されていますので、ドラマの内容が事前にわかってしまいますが、その程度のことは気にしないというNHK制作スタッフの意気込みがすばらしい!……と感じます。

あとは、番組のDVD化を願うのみ!
ずっと前にも書いたと思いますが、全12回なので、DVDが出たら「経済学入門」といった講義にきっと使えます。日本全国にいらっしゃる、入門レベルの経済学の担当教員のみなさま、DVDが出たら、「研究費で買うつもりだ」とか「学校の予算で買ってもらうつもりだ」といったご意見を、ぜひ下記の番組ホームページにお願いします。
https://www.nhk.or.jp/shussya/form/index.html

DVD化されれば、他にライバルがない(経済学の基本を学ぶためのDVDはいくつか販売されていますが、短い時間にたくさんの内容を表面的にふれるだけで詰め込んでいますから、こちらとは競合しない)と思われますから、長期で考えれば、売り上げを伸ばし続けられると信じています。

とにかく、1日で5本(=旧4+新1)の放送があり、コミック版が出版される3月14日は、『出社が楽しい経済学・祭り』といった感じです。ただ、この番組の企画を最初に立てたNディレクター(この1年間、私にとって一番会話時間が長かった相手)は、現在は取材で南米に出かけています。ということで、Nディレクターが日本にいないうちに、私は他の用事を片づけなければ……

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2009年3月 7日 (土)

「出社が楽しい経済学」の放送『第9回 囚人のジレンマ』監修者の言い訳

番組の内容について、こちらの主張が通ることもありましたが、通らずにディレクターに押し切られることもあり、いろいろでした。今回の「囚人のジレンマ」は、いわゆる「ゲーム理論」の紹介。ゲーム理論の典型的な題材として、まず出てくることも多い囚人のジレンマですが、合理的な2人が行き着く先の状態は「均衡」と呼ばれます。1回限りの囚人のジレンマでは、両者が「裏切り」を選ぶのが「均衡」ですが、これは「支配戦略均衡」と呼ばれます。
じつは、ゲーム理論で一番重要な均衡は、「ナッシュ均衡」と呼ばれるもの。「支配戦略均衡」も「ナッシュ均衡」の一種なので、囚人のジレンマでの均衡はナッシュ均衡と言ってもいい……よくわからない説明ですね。ゲーム理論はかなりむずかしいのです。でも、そのぶん、わかるととてもおもしろいです。
ナッシュ均衡を発見したナッシュは、ノーベル経済学賞を受賞したし、映画『ビューティフル・マインド』の主人公として有名です。だから、ゲーム理論の一番の基礎であるナッシュ均衡について軽くでもふれてほしい私は、「こぼれ話」のコーナーでナッシュという人物を取り上げてほしいと、何度もお願いしました。
しかし、その希望は通らなかったんです。まあ、仕方がないですね。代わりに取り上げられたのが「ノイマン」で、誰もが納得する選択でしたから。
また、後半の「繰り返し囚人のジレンマ」は、「有限回」か「無限回」かが重要で、その辺りの説明も入れたいというのが、私の意見でしたが、ディレクターが「無限回のほうしか取り上げない」と割り切ったため、やはりスッキリして、わかりやすくなっています。それでもなお、この回は理解がむずかしいテーマでした。
ゲーム理論に興味を持った方は、ぜひ、本屋さんでわかりやすそうな入門書を探して読んでください。いろいろと出ているので、パラパラとみて、自分が気に入ったものを選べばいいでしょう。

次回は『共有地の悲劇』です。いわゆる環境問題の話が出てきます。第10回からの3回ぶんは、ディレクターの意向が強く反映されています。私が選んだなら、もっとちがうテーマを選んだと思います。
結果として、素人っぽいテーマ選択と順番設定がすごく成功していますから、これからの3回も、ぜひお楽しみに。

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2009年2月28日 (土)

「出社が楽しい経済学」の放送『第8回 裁定』監修者の言い訳

現実には「裁定」のチャンスはほとんど存在しない。他方、「投機」は世の中にあふれている。しかも、本人は「確実に儲かる取引」をしていると信じているのだけど、非常に危険な投機をしているというケースもよくある……偶然にも今日、その強烈な典型例を実際にみてきました。
先日のブログにコメントがついていますので、そのネタについて書きます。コメントは、兵庫県朝来市の市議会議員の先生からで、今日、私が朝来市に行くことにふれて、その先生は参加できないけれども「よろしく……」と書かれていました。
兵庫県のローカルニュースとしては、主要紙や複数のテレビが報じているようですが、朝来市は108億円の基金の大半を怪しげな金融商品で運用していることが発覚しました。かつてこのブログで、大学の巨額損失の話を書きましたが、そこにも出てきた非常に悪質な金融商品です。
ところが、運用の責任を問われた市長は、「安全な運用で、まったく問題ない」といった趣旨の説明を市民に向かってしているとのことです。あきれたことに、兵庫県までもが、同じようなコメントをしています。ちなみに、私が住む名古屋市も、ほぼ同様の運用をしているらしいことが、先週の日経に出ていました(日経の記事を読んだだけではわからないような書き方でしたが、事情を知っている人間が読めば、わかる記事でした)。
なお、名古屋市役所は、借金の際にも強烈なギャンブルといえる借り方をしていることが、2年ほど前に指摘されており、運用のほうでも危険性の強いギャンブルをしていますから、税収はギャンブルのタネ銭だと思い込んでいるようです。「ギャンブル中毒市役所」と名前を変えるべきでしょうね(ついでに「おバカ」という言葉もつけるべきですね)。さすが、パチンコの本場……などと笑うわけにはいきません。私が一所懸命働いて稼いだ所得から支払った税金が、ギャンブル狂の名古屋市役所のギャンブルのタネ銭になっているのですから。もちろん、激怒しています……さっさと名古屋市以外に「ふるさと納税」をしなくては、ねぇ、善良な名古屋市民のみなさん!……実際には、面倒なので、私はしない可能性も高いのですが、そう思うぐらい怒っています(当然ですよね)。
それで、兵庫県が、兵庫県内にある朝来市の危険な運用を「問題ない」と片付けようとするのは、借金の際のギャンブルを兵庫県もしているし、兵庫県の中心都市である神戸市もしている(これらは約2年前に指摘されていた)という事情、また、兵庫県内には朝来市以外にも、同様の問題を抱える市がありそうだといった事情があります。
要するに、県下の地方自治体にギャンブル中毒が蔓延しすぎているうえに、兵庫県そのものもギャンブルに手を染めているので、「これはギャンブルじゃない」と言い張るしかないのです。
このブログを読んでいるみなさんの住んでいる地方自治体も、もしかしたら、みなさんが支払った税金をタネ銭にして(あるいは将来の税収をカタにして)為替レートや株価の変動に賭けるギャンブルをしているかもしれません。残念ですが、その確率は意外に高いのです。
「確実に儲ける方法の裁定と投機のちがいに注意を!」という居相田係長の指摘は、日本各地の地方自治体にこそ聞いてほしいものです。
なお、どういった内容のギャンブルかについては、運用のほうは拙著『金融商品にだまされるな!』の最終章に、借金のほうは拙著『金融機関のカモにならない!お金の練習問題50』の最終問題で紹介しています。ともに2007年11月に出版した本ですが、じつは、地方自治体などの危険なギャンブルを警告したいという意図もありました。
それで、私の予言通りに、社会問題化しようとしているのですが、隠蔽しようとするところも多い。ですから、きちんと表面化させて、問題に対処しようとしている朝来市に対しては、できるだけの協力をしたいと考えています。

さて、次回の番組のテーマは「囚人のジレンマ」。いわゆるゲーム理論が登場します。私は、じつは中学生のときに講談社現代新書と講談社ブルーバックスで、ゲーム理論の本を読んでおり、経済学部に進んで、ゲーム理論が出てきて、囚人のジレンマが出てきたときには、懐かしく感じたものです。
表が出てきて、その表の読み方に慣れるまで戸惑いやすいのがゲーム理論ですが、番組の担当ディレクターが必死になってわかりやすくしてくれています。ぜひ、お楽しみに。
番組のガイドブックをお持ちの方は、手元に置いて番組をみていただくといい回です。なお、ガイドブックに出てくる表は、担当ディレクターが橘玲先生のご著書を参考に作成していますので、どこかでみたことがあると思われた方、そう、どこかでみたような表になっています……私は他人のアイディアの真似はできるだけ避けたいと思うのですが、NHKの番組制作者は、番組をわかりやすくするためなら、そんなことは気にしないので……とにかく、必死にわかりやすくしたはずの回を、どうぞお楽しみに。

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2009年2月22日 (日)

映画館よりファーストフード店を押した理由

昨日の話(「出社が楽しい経済学・第7回・価格差別」の制作裏話)のつづきです。
価格差別の例としてよく使われるのが「学割」で、いろいろな本でよく出てくるものとして、つぎの2つがあります。

1.パソコン・ソフトの学割(アカデミック・ディスカウント)
2.映画館の学割

ところが、この2つを番組の題材として使おうとしたNディレクターに対して、私がそれはダメだと強く主張したために、かなり面倒なことになり、長い長い時間議論をせざるをえなかったのです。
私がダメだと考えた理由を説明する前に、これらの事例を使って説明したかったのは「グループ別の価格差別」だという事情を述べておきます。番組の中で、前半は「グループ別の価格差別」をやり、後半は「自己選択型の価格差別」をやるという基本方針があり、実際に昨日の放送もそうなっていましたが、この2つのうち、意外に前者の「グループ別の価格差別」の事例が探しにくいというのが、私の実感です。

それで、先の2つの事例に私がダメ出しをした理由を説明すると、まず、1の「パソコン・ソフトの学割」は、たいていの場合、教員にも適用されます。教員は研究・教育目的で買うのだから、「高くても買いそう」と考えてもいいはずです。その教員に対して割引するのは、「価格に敏感な相手には割引(安く)」という価格差別の論理からではなく、「教員が使えば、それと同じソフトが学生に売りやすくなる」という理由からだと考えたほうがすっきりします。この考え方でのキーワードは、第12回に出てきます(ネットワーク外部性)。
また、実際のソフトウェアの販売をみていると、たとえばアドビは、かなり厳密に学生・教員の身分確認をして、ひとりにひとつのソフトしか売らないよう管理しています。だから、これを「グループ別の価格差別」と考えるのは、まだわかります。
ところが、マイクロソフトやジャストシステムなどの多くの企業は、すごく簡単な確認で学割を適用します。また、ひとりが何本でも学割で同じソフトを買うことができます。だから、ほとんどの人が、周囲に学生・生徒・児童や教員がいて(いる確率はすごく高く)、その人に買ってもらえば、学割価格で買えてしまいます。
こう考えると、パソコン・ソフトの学割の多くは、じつは、消費者側がひと手間かけるかどうかでおこなう価格差別、つまり「自己選択型の価格差別」とみるべきではないか?……これが私の主張です。こういった紛れがありうる事例はできるだけ使うべきでないと、私が言い張ったため、経済学のテキストによく出てきて、若い人たちにわかりやすい事例のひとつが、番組で使えないことになったわけです。

もうひとつ、2の「映画館の学割」は、本当によく教科書に出てくる事例で、だからNディレクターはこれを番組で使うつもりでがんばったのですが、これも私が使わせなかったので、ガイドブックの「裏話」のところにNディレクターが愚痴を書いているという次第です。
ついでに楽屋内をバラすと、その「裏話」の原稿をめぐっても、数時間話をすることになり、かなり苦労しました。当初、私が「映画館の学割は価格差別ではないと言った」と書かれたのですが、私は「番組で使う価格差別の例としては不適切」と主張したつもりでした。この辺りに誤解があり、お互いにこの件では長い時間苦労したため、水掛け論のような感じになって大変でした。最後は、「私がどう言ったにしても、映画館の学割は価格差別ではないと書いてしまうと、つぎに他のテキストなどを読む人を混乱させる危険性があるから、それは止めてほしい」との説得に、Nディレクターが折れてくれたので、何とかなりました。
ではなぜ、映画館の学割について、価格差別の例として「番組で使うのは不適切だ」と私が主張したのか?
第1に、映画そのものは、制作・配給会社を考えれば、基本的に「独占」です。それで、価格差別は独占企業がおこなう事例のほうが説明しやすい(この点は番組内で私がコメントしています)。だから映画もいい事例にみえるのですが、よく考えれば、映画館はたくさんあって、かなり激しく競争している。だから、「価格差別ではあるけれども、価格差別の典型例として解説に使うには不適切な事例」だと私は思うのです。
第2に、こちらのほうがより大きな問題ですが、映画の料金は、すごく合理的な価格戦略に基づいているとは思えない。この点は、何人もの経済学者が主張している点です。巨額の制作費をかけてハリウッドなどで制作され、ヒットすることがほぼ確実な映画なら、もっと高い料金設定にしてもいいはず。それなのに、どの映画も同じ料金になっている。この点で、「少しでも利益を増やそうと工夫した料金体系」にはみえないのに、「学割で価格差別をしている」と主張するのは、すごく違和感があるし、説得力がない! 私はそう思うわけです。
私自身は、価格差別の事例を示すときには、上記の2つの点に注目して、説明しやすい事例を選んできたつもりです。だから、コンビニやファーストフード店や携帯電話会社などの事例は好きなのです。そういった企業は、顧客データの収集に熱心で、科学的な分析を基に価格設定をしているからです。番組の中でも、できるだけ、「その企業はいかにも戦略的に価格を設定していそうだ」と感じてもらえそうな企業の事例を、と強く主張しました。
また、表面上はグループ別の価格差別にみえて、じつは自己選択型の価格差別とも考えられそうな事例は、できるだけ避けることを主張しました。だからパソコン・ソフトの学割という事例も使えない……もっとも、どちらのタイプの価格差別かを意識しなくていい「番組最後のクイズ」には使いましたが。
それで、基本に立ち返ると、グループ別の価格差別の典型例は、「異なる地域・国」で異なる価格をつけるというやり方で、教科書にもよく出てきます。だから、「地域別価格がいい!」と強く主張しました。特に、マクドナルドの地域別価格は、1年半前に導入されたものですから、さらに説明に都合がいい……この点は、昨年7月に渋谷のNHKに出向いて、丸1日、制作スタッフに経済学をレクチャーしながら番組構成を議論したときにも、強調していました。
というのも、その段階では、何とか「需要の価格弾力性」という概念をきちんと図解で示そうと考えていて(台本などを作り込む段階では、誰もがすぐにあきらめたのですが)、その際に、同じ価格からスタートして、価格を上げるか下げるかという話にするほうが、まだわかりやすいという事情がありました。マクドナルドの事例なら、少し前まで全国で同じ価格だったので、需要の価格弾力性の図解が格段にやりやすいということです。なおこの点は、拙著『クルマは家電量販店で買え!』の中の説明で活用していますが、テレビのような動画的な図解は無理ですので、さほどメリットが感じられません。でも、テレビでやるには、「マクドナルドの地域別価格はすごく使いやすいはず」でした。
そう主張する私に対して、Nディレクターは「何度考え直しても、映画館の学割のほうが身近でわかりやすい」と感じていたようで、くり返し議論をした結果、専門家である私の意見を通してもらったという経緯があります。その際の議論のメモは手元にあり、かなりおもしろいので、またどこかで使いたいとは思っています。

もうひとつ、「貧乏人に対しては赤字覚悟で治療をおこなう医者が、金持ちからは高い治療代を取るという事例も、やはり価格差別だ」と書いてある本があり、この事例も番組制作の際に議論に上りました。
これに対しても、私は強く反対し、それを価格差別として紹介するのはダメだと主張しました。
その理由がわかりますか? ぜひ、考えてみてください。第7回の放送の中にヒントがあります。価格差別とはどういうものかという定義を居相田係長が述べているところがいくつかありますが、そのひとつの説明が、「貧乏人には赤字覚悟で治療する医者」の事例が当てはまるかどうかをチェックすれば、当てはまらないことがわかるはずです。ただし、じつは他の回の内容を適用されると、結論が異なる可能性もあって……あぁ、事例選びは本当にむずかしい! 私たちがかなり細かいところにこだわって番組を制作したことをご理解いただければ、大変にうれしく思います。
なお、第7回の放送を録画していない方には、再放送もありますし、NHKオンデマンドもありますし、さらに、コミック版も3月中旬に出ますし……そのためには、私が今日がんばって、コミック版の初校チェックをしないといけないのですが……あぁ、それなのにブログを書いている……ということで、ここまでで止めておきます。このブログの2つ前での約束は果たしたと思いますので。

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2009年2月21日 (土)

「出社が楽しい経済学」の放送『第7回 価格差別』監修者の言い訳

昨日・今日の2日間は、危険な金融商品を売りつけられて大損した人や、怪しい投資話にだまされた人たちを救う活動をされている弁護士の先生方の集まりである「全国証券問題研究会」が、京都の同志社大学ロースクールで開かれていましたので、そこに参加していました。
2005年5月に『金融広告を読め』という本を出したとき、実在する金融商品広告を基に作成した架空広告を大量に掲載して、バッサバッサと批判しました。その年の12月に、埼玉で開かれた全国証券問題研究会にお招きいただいたことがきっかけで、そのあと、年2回のこの研究会には欠かさず参加しています。
学者(大学教員)としての参加でしたので、大学教員を辞める4月以降はお呼びいただけるかどうか、少し不安でしたが、呼んでいただけるとのお約束をいただき、ほっとしました。私にとっては、本当に勉強になる研究会(内容・形式的には、ほぼ学会)です。
今回参加して、私の専門分野のひとつである「デリバティブ」に関係した金融商品被害が拡大していることが痛感され、もっと本を書かないといけないという気持ちになりました。
3月以降、どういった本を書くかについては、もう少ししたら、ちょっとずつ情報を流したいとは思っておりますが、いまは、残務処理と、NHKの番組関連の仕事がまだ中心で、たとえば、「出社が楽しい経済学」のコミック版の校正が直近の仕事として残されています。

さて、番組の話を……
監修者として一番手間がかかったのが、この「価格差別」の回です。番組ガイドブックのディレクター裏話にもあるように、私がいろいろと注文をつけ、ディレクターもいろいろと提案をして、この回の題材選びだけでも、10時間ぐらいは仕事をしたと思います(会って話をしたり、メールを書いたり、電話で相談したり、調べたりの合計です)。
最近も、クイズの解説についてのやりとりだけで、数時間かけて考えたりメールを書いたりした気がします。クイズの解説で私もディレクターも悩んだのは、つぎのような問題点があったからです。
番組前半で取り上げた「グループ別の価格差別」は、本来なら「需要曲線」と呼ばれる図(グラフ)を示したうえで、「需要の価格弾力性」と呼ばれる概念を使って説明するものです。それを、厳密な説明はせずに、「価格に対する敏感さ」と表現したものを中心に解説しています。これは需要の価格弾力性のことを言っているわけですが、いかにも中途半端な説明で終わらせています。
また、価格差別で企業が増やそうとするのは、本当なら「利益(利潤)」です。ところが、「利益=収入−コスト」ですから、コストの話もしないと、説明ができなくなります。そこで、「利益」でなく「収入」を増やすという話にして、番組内では説明しています。これは、図解の関係上、泣く泣くやっていることです。一応、コストは一定と考えて、収入が増えれば利益も増えると考えているわけです(かなり怪しい言い訳ですね)。
ところが、ホームページ上の解説では図を使いませんから、図解のために無理に「収入」で話をする必要などなく、「利益」で説明をしたほうがいい。この辺りの点と、先に述べた、需要の価格弾力性をきちんと説明していない点が、クイズなどの解説を非常にやりにくくしているのです。

つぎの第8回は『裁定』です。ある意味で、一番経済学らしい話かもしれません。私の本をお読みになった方なら、おわかりの方も多いかと思いますが、『スタバではグランデを買え!』や『クルマは家電量販店で買え!』や『金融工学 マネーゲームの魔術』は、裁定を中心的な考え方のひとつとして書いた本です。
いかにも吉本佳生が監修した番組だという感じが一番出ているのが、次回だと思います。ということで、次回の視聴率や評判が悪いと、番組に関連した私の評価が下がります(それが禍か福かは微妙ですが)。どうぞよろしくお願いいたします(どういう意味かわからない表現ですね)。

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2009年2月14日 (土)

「出社が楽しい経済学」の放送『第6回 逆選択』監修者の言い訳

家庭の都合で、今回は番組の放送時間帯に新幹線での移動を強いられ、残念なことに、番組をみることができませんでした。数日してから録画したものをみるしかないのですが、第6回はこの番組の忘年会で完成版の試写があったため、すでにみていると言ってもいいでしょう。
NHKの番組制作スタッフは、明らかに、この回の「ドラマ」が一番おもしろいと思っているようです。ただし、説明している概念は、全12回の中でもむずかしい部類に入ります。
経済学者が一番重視するものは「インセンティブ(第4回のキーワード)」で、インセンティブが歪んだ(悪い方向への)影響をもたらす問題のひとつが「モラルハザード(第5回のキーワード)」。モラルハザードの背景には、「情報の非対称性」と呼ばれる状況がありましたが、今回の「逆選択」も情報の非対称性が原因で引き起こされる問題です。
それで、番組の本にはきちんと書いてありますが、情報の非対称性は、商品やサービスや労働の売り手(供給側)が情報面で優位にあるケースだけでなく、反対に、商品やサービスや労働の買い手(需要側)が情報面で優位にあるケースもあります。しかし、逆選択の話では、他にもややこしい説明をいくつかする必要がありますから、番組では、売り手が情報面で優位にあるケースを前提に話を進めました。
NHKのスタッフ側は、当初、前半のドラマの中心になる題材として「出会い系サイト」を選択していましたが、中学・高校生向けの教育にも使えるような番組という点を重視していた私が強く反対、結局、出会い系サイトの話は残すものの、中心の題材は「怪しい投資話」となりました。
それで、今度は、「本当に儲かる投資話」と「本当は詐欺的な投資話」の2種類があって……という説明が用意されたのですが、これにも私が難色を示しました。電話で勧誘してくる投資話について、逆選択が起きなければ「本当に儲かる投資話」が存在するとの説明は、誤解を招く危険性がある……なぜなら、逆選択が起きなくても、電話で勧誘がある投資話の中に「本当に儲かる投資話」なんて存在しないからだ! と強く主張したのです。
このように何度も、私が個人的な意見を強く主張しましたので、この回の台本作成では、番組制作スタッフがかなり苦労したと思われます。そういった意味の思い入れもまた、強いのかもしれません。

つぎの第7回は「価格差別」です。
本当は初回に持ってくるはずでした。経済学のおもしろさを伝えようとするときに、経済学者がよく使う、まさに定番のネタだからです。ところが、第7回の台本作成前の打ち合わせもまた、すごく長い時間を要することになりました。その顛末の一部は、番組の本でディレクターが書いていますが……くわしくは、第7回放送後に?……本当に来週その話を書くかどうか、確約はできませんが、覚えていたら書きます(最近、本当にいろいろなことをすぐ忘れますので)。

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2009年2月 7日 (土)

「出社が楽しい経済学」の放送『第5回 モラルハザード』監修者の言い訳

Macユーザーに転向したものの、まだまだ慣れず、今週木曜ぐらいまでに書かなければいけない原稿を、火曜に1000字ほど書いたところですべて失う(文字化けして戻せず)という事態に陥りました。その影響で今日のブログ更新もあっぷあっぷです。
とはいえ、Macはいいですね。WindowsのVista版MS-Officeに比べて、Macの最新のMS-Officeは、前のXP版MS-Officeに近い。Vista版の発売日から使っていて、まだ慣れることができない私は、かなり使いやすさを感じています。

さて、今回の「モラルハザード」は、金融不安がなぜ起こったのか、巨額損失を被った金融機関や大幅な赤字に転落した大手企業の経営危機を救うかどうか、といった現代の重要なテーマを考えるうえで、絶対に理解しておくべき経済用語です。
新聞記事やテレビのニュースに出てくるとき、「モラルハザード」は経済用語としての意味とちがう意味で使われていることが多い。これは本当に残念なことです。それに慣れている人は、経済用語としての意味に切り替えて考えるのがむずかしい。他ならぬ、「出社が楽しい経済学」の制作スタッフでさえ、かなり苦労していました。
そのうえ、モラルハザードの意味の説明によく使う事例として、「保険」の話があり、もともとモラルハザードは保険用語だと言ってもいいぐらいですが、保険を例に説明することに、私が徹底して反対したので、NHKの制作スタッフはかなり困っていたはずです。
それはどういうことか?
通常の経済学テキストの説明では、自動車保険や医療保険などの保険加入者のほうが、乱暴な運転をしたり、暴飲暴食をして健康管理を怠ったりするという意味で、モラルハザードを引き起こす……そう説明される。でも、私が「そんな説明を、この私がテレビですることはありえない!」と言い張ったわけです。
この数年、社会問題として出ていたのは、保険会社のほうが不払いなどの問題を引き起こすというもので、現代では、保険契約をめぐるモラルハザードは、保険加入者が引き起こすものよりも、反対に保険会社が引き起こすほうが申告だったりする。それをバランスよく両方取り上げるのなら、そうしてもいい。でも、保険会社側の問題には言及せず、保険加入者(消費者)側の問題にだけ言及するなんて……実際に日本で保険会社側が引き起こしてきたモラルハザード(不払いなど)の酷さ(非道さ?)をよく知っている私としては、「絶対に嫌だ!」と言い張ったわけです。
でも、こんなややこしそうな概念について、一番よく使われる説明を封じられて、スタッフのみなさんは困ったでしょうね。申し訳ありませんでした。
でもでも、後半のところで、食品偽装などの問題が生じるのには、消費者側にも問題があるという話が出てきます。この話に説得力を持たせるためにも、保険の場合も消費者側に問題があるというだけの説明は避けたかった。いかにも「企業(生産者)寄り」になって、バランスを欠いたと思います。
私は、当然のことながら、今回の構成は気に入っています。わがままを通してくださった、番組制作スタッフにお礼を申し上げます。

つぎはいよいよ、第6回「逆選択」です。今回のモラルハザードと並んで、「情報」の格差が原因で生じる典型的な経済問題のもうひとつ。NHKの番組制作スタッフが一番おもしろいと思っている回です。ぜひお楽しみに。

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2009年1月31日 (土)

「出社が楽しい経済学」の放送『第4回 インセンティブ』監修者の言い訳

じつは、2日前から移行作業を開始して、今日からほぼ完全にMacユーザーに転向しました。このブログもMacで書き、Macで投稿しました。一昨日購入したのはMacBookAirで、Macを使うのは12年ぶり。本の原稿では、最終の図版がMacで作成されることが一般的で、フォントの関係があるために、Windowsで作成した図版を渡すといろいろな問題が生じます。
それで、Macへの移行が一番の解決策だとわかっていても、なかなかできなかったところ、約2週間前にLet’sNOTEが壊れた(壊した)。そこで、思い切ってMacに移行することを検討し、やっと実行しました。
とはいえ、毎日何らかの用事が入っている状況が続きましたので、空き時間をやりくりして、3日かけてやっとまあまあ使える状況になりました。でも、Macのいろいろな操作にはまだまだ慣れていません(そりゃそうでしょう)。
ちなみに、EMOBILEのデータ通信カードをUSBタイプに変更するために寄った家電量販店で、うちの妻はEMOBILEのセット販売でSONYのVAIO type Pを買いました(妻がクルマの中で息子を遊ばせているうちに、私が売場に行って私の名義で契約し、妻に渡したのですが)。

さて、第4回の出社が楽しい経済学、テーマは「インセンティブ」でした。経済学的な考え方を身につけるには、結局のところ、徹底して人々の行動に影響するインセンティブに注目すればいい。ただそれだけのことです。
多くの人にとって、現実の人々や企業の行動では、インセンティブは思わぬ方向に働いたりするようにみえる。経済学のセンスが磨かれると、インセンティブの働きが正しく予想できるようになる。逆に言えば、インセンティブが働く方向を正しく予想できるように訓練すれば、経済学の習熟度は上がったと断言できます。
別に、むずかしい経済学のテキストを読まなくても、インセンティブに注目する習慣さえ身につけば、それで世の中の経済現象をみる経験を積むことで、経済学はマスターできます。経済学の理論をテキストや講義などで学ぶことの意味は、習熟の期間を短くするという点にあるのであって、時間をかけていいのなら、経済学の本を読まなくても、経済学の番組をみなくても、経済学的なセンスはある程度磨かれます。
インセンティブこそが経済学修得のカギで、「出社が楽しい経済学」は効率的にそういった内容が理解できるように構成されています。番組をみたあとに、インセンティブに注目する習慣を心がけていただければ、きっと経済センスが高まります。

つぎの第5回は「モラルハザード」、そのつぎの第6回は「逆選択」です。この2つの回は、「情報」の格差が原因で生じるインセンティブの歪み、つまり、インセンティブが悪い方向に働くことでの問題を取り上げています。ぜひお楽しみに。

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2009年1月25日 (日)

「出社が楽しい経済学」はこれから3回がさらにおもしろい

とにかくこの1週間の疲れがあって、昨夜は次回予告をきちんと書けませんでした。書きながら寝かけていましたので。

じつは、つぎの第4回から第6回までは、独立した内容ではありますが、少しずつつながりがある内容になっています。そして、第6回(キーワードは逆選択)こそが、全12回で一番おもしろいというのが、制作スタッフの感想のようです。

実際に、全12回の番組がほとんど完成していた昨年12月下旬に開かれた番組の忘年会では、1回ぶんだけ、完成した番組をみんなで観たのですが、それが第6回でした。

その一番のおすすめの第6回をさらに楽しむには、その前に第4回と第5回を観ていただきたい(本当は10倍楽しめるとか書きたいのですが、胡散臭くなるので……)。ということで、ここから3回が、野球の打線ならクリーンナップ、カラオケならサビの部分です。

第7回もかなりおもしろいし(当初は第1回に置こうとしていた内容ですから)、第8回と第9回も内容的にはぜひ学んでほしい内容で、十分におもしろいし、第10回も……と、まあどれもそれぞれによくできていますが、やはり第6回は、ぜひ観てほしい。

そして、繰り返しますが、第6回を楽しむには第4回と第5回も観ておくべきで……話がくどいようですが、要するに、次回以降もよろしくお願いいたします。

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「出社が楽しい経済学」の放送『第3回 比較優位』監修者の言い訳

番組の本でも、担当ディレクターが裏話として紹介している話ですが、私経済学部の大学生に繰り返し言っていることのひとつは、

「せめて、『比較優位』と『実質金利』の2つの考え方だけは覚えて卒業すると、きっと役に立つことがあると思うよ」というもの。

また、私が学部生だったときのゼミの先生は、結婚式の仲人や主賓としてスピーチするときには、いつも比較優位の話をしているとおっしゃっていた。

「夫婦の能力を比べると、夫のほうが、仕事もよくできるうえに、料理などの家事も上手だとして、それでも、家事は妻に任せて(夫は口を出さず)、そのぶんだけ夫には仕事に専念してもらうほうが、夫婦ともに幸せ(豊か)になれる」といったスピーチをしていたらしい。

もっとも、最近は、「何をやっても、奥さんのほうが能力が高いとしても……」という話から始めるほうが、しっくりくるケースが多そうですが(さて、他ならぬ我が家は……?)。

比較優位は、現代の私たちがこれほどまで物質的に豊かな生活が送れるのはなぜかを説明する基本原理です。しかし、その考え方を始めて聞く人の中には、意外な結論に納得できず、何かトンデモないまちがいをふくんだ話だと決めつける人もいます。自分にすごく自信があって、周囲のたいていの人を見下し、「こいつらに何か頼むぐらいなら、全部自分でやるほうが効率的だ」と信じている人たちです。

そういった人をみると、私は「比較優位の考え方を信じたほうが、ずっと幸せになれるのになあ」と、いつも思ってしまいます。「どんな相手とでも、お互いのためになる分業方法はきっとある」という比較優位の結論を信じることができれば、きっと、すごく気楽になれます。

さて、今回の比較優位は、全12回の中で一番苦労が多かったテーマではないかと思います。視聴者が「意外にむずかしい」と考えてしまいそうな概念でした。

次回は『インセンティブ』です。お楽しみに。

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2009年1月22日 (木)

『出社が楽しい経済学』のコミック版について(追加情報)

今週月曜(1月19日)の夕方、一橋大学の学生たちに招かれて、講演をしてきました。講演というより、拙著『スタバではグランデを買え!』と『クルマは家電量販店で買え!』の中からいくつかの題材を拾って、日常生活の中で経済学的なセンスをいかに磨くかという、1回限りの講義をしたという感じでした。

結果としてこれが、大学教員としての私が大学でおこなう最後の講義となりました(とりあえずの話ですが)。勤務先大学は学生の質の低下が著しく、今年に入ってからの講義では、講義の妨害をするバカな学生を追い出す際に不愉快な思いをすることが続きましたので、久しぶりにきちんとした学生を前に講義をすることができて、楽しく感じました。

半分ぐらいの学生が拙著を読んでくれていて、とてもうれしかったのですが、読んでいる人とそうでない人が半々の聴衆に話をするのは、とてもむずかしい。そこで、読んでいない人を前提に話をしつつ、本に書いていないことを補足するというやり方にしました。

この講演会を、先週金曜日にNHKで打ち合わせをした宝島社の女性編集者も聴きに来てくれて、講演終了後、一橋大学近くの喫茶店で打ち合わせをしました。そう、コミック版は「宝島社」から出版の予定なんです。

それで、私に対して「うちの出版社に持って来いよ」と感じられた編集者が、きっと数人いらっしゃると思いますが、今回の出版社の選択は、NHK出版の推薦を受けてのもので、私が決めたのではありません。どうぞお許しください。

と、ずっとお待ちいただいている編集者のみなさまへの言い訳から始めて、本当に申し訳ありません。とはいえ、この言い訳を書いておきたくて、まったく時間に余裕がない中で、今回のブログを書いているというのが本音です。

さて本題(?)。

すでにNHK出版から出ている番組の公式ガイドブック(番組テキスト)の『出社が楽しい経済学』と、コミック版のちがいをご説明いたします。

番組のドラマ部分を再現したのがコミック版で、解説も入ります。ただし、解説は番組での解説の一部を抜粋したもので、すべての解説は再現されません。たとえば、私が話をしている部分はほとんど入れていません。

ドラマの内容がわかるために必要な解説だけを入れているといった感じです。

そして、すでに発売されている本のほうには、ドラマそのものは入っておらず、番組では説明していない内容もかなり入っています。番組の前に予習をしたり、番組のあとに復習や少し発展的な勉強をするための本として書きました(私だけで書いたわけではありませんが)。

番組を観て勉強しようという人には、やはりこちらの本のほうを読んでいただきたい。

コミック版は、番組を見逃した人に、番組の中心部分だったドラマを再現してお伝えしたいという感じでしょうか。もちろん、番組を観ておもしろいと感じた方が、コミック版を読むと、少しちがったかたちで同じ内容をくり返し学べますから、知識が定着しやすいと思います。

私たちは、これらの本が手元になくても、番組だけで十分におもしろいと感じてもらえるように、番組の構成などを考える際に努力してきたつもりですので、正直なところ、本を買っていただく必要はそれほどない(こんなことを書くと怒られそうですが)。

ただ、3ヵ月で計12回、しかも土曜深夜放送の番組をきちんと12回観て、その都度、内容をきちんと理解するのは、現実には大変なことだと思われますので、2種類の本でそれを補完できるようにしている……これが、私の中での2種類の本の位置づけで、そのうえで、2種類の本もお互いに補完するような内容になるよう、意識して監修・執筆をしています。

さて、ここからは大学などで経済学を教えている方へのアピールを。

ドラマ部分にも、解説部分にも、専門家からみて「そこはチョットちがうんじゃないの?」と「突っ込み」を入れたくなるところがいくつもあるはずです。「この話をするのなら、もう少し先の解説もしてくれればいいのに」と思われるところもたくさんあるはずです。

そして、この番組は計12回です。

ということで、教養科目や入門科目として、半期の講義(通常は90分講義を計14回)で経済学を教えるための教材としていかがでしょうか?

最初に30分、この番組を流してから、残り1時間で関連する内容の講義をするといった感じで、十分使えるはずだと思うのですが……

なぜ、こんなアピールをするのかというと、書籍化もコミック化も現実になったことで、つぎに望むのは「DVD化」だからです。

ちなみに、番組制作が進んでいる段階で、NHKのNディレクターが一番望んでいたのは「コミック化」だったと思います。一方、当初から私が一番望んでいるのは「DVD化」です。

番組のDVDが出れば、大学の入門レベルの講義や、高校・中学校での経済教育に活用してもらえる可能性がある。その意味では、「NHK教育テレビ」というのは最高のブランドだ(総合テレビよりもいい)。DVD化は確実な話ではないだろうが、その可能性があるのなら、番組の制作をお手伝いすることにしよう。

以上が、この番組への協力を求められたときにNディレクターにも申し上げたことで、私がこの番組の制作に参加することにした一番の動機です。

ということで、DVDが出れば、教育に使いたいとお思いの方がいらっしゃいましたら、番組ホームページのトップページの下のほうに「ご意見・ご感想は、こちらからどうぞ」というところがありますので、ぜひ、DVD化を望む声をNHKにお届けください。

この件は、私のブログにコメントを書き込んでいただいても、私宛にメールをお送りいただいても、効果はありませんので、ぜひぜひNHKに直接お届けください。

また、DVD化に際して、追加してほしいコンテンツ(特典)などがありましたら、ぜひ、そのあたりのご要望もお書きください。実際には、なかなか実現しないと思いますが、少なくとも私は、どんなご要望も真剣に検討することをお約束します(私にはほとんど権限がありませんが)。

あ~。本当に本当に、DVD化が実現してほしいなあ……ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

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2009年1月17日 (土)

「出社が楽しい経済学」の放送『第2回 機会費用』監修者の言い訳

現在、仕事がうまく消化できず混乱しているうえに、水曜の夜にパソコンが完全に壊れて(たぶん正しくは、私が乱暴に扱って壊して)、かなりひどい状況になっていますが、とにかく、番組放送後なので、ブログを更新します。そう書きながら、長々と書いちゃうんですが……

まずは、番組に関係する最新情報のお知らせから。

先週、「事情があって、編集段階の番組をDVDでもらい、それを観て作業」と書きましたが、これはコミック版作成のための作業でした。そう、「出社が楽しい経済学」のドラマ部分が『マンガ』になるのです。それで、ドラマの中で居相田係長がやっているという設定の経済解説(CGなどでの説明もふくみます)を、私がコミック版の原稿にするという作業をしていたのです。

3月中旬、番組の放送がまだ何回か残っているうちにコミック版が出版される予定です。出版社などの情報は、また今度書きます。

出版社側は、とてもきついスケジュールでの作業になりますので、複数の漫画家に作画を依頼しています。そのため、キャラクター設定用の主要登場人物の絵がすでに描かれていて、それを昨日(16日)、NHKでみせてもらいました。その日は、第12回、つまり最終回の解説部分のチェックと、テレビ情報誌「NHKウイークリー ステラ」のインタビューの仕事があって、東京・渋谷のNHKにいたので、空き時間に編集者にもNHKに来ていただき、コミック版の打ち合わせをしたのでした。

「ステラ」には写真も掲載されるそうで、1月23日号の表紙の妻夫木聡さん(今年の大河ドラマの主役)の写真も撮影したというカメラマンが、私の写真も撮影してくれました。目玉焼きだけを料理するのに、有名シェフを呼んでいるような感じで、恐縮しました。

コミック版の話に戻りますが、キャラクター設定用の絵がめちゃくちゃに格好いい! 特に下野さんの絵が絶品でした。コミック版はかなり期待できそうです。

さて、今回の「機会費用」はいかがでしたか?

先週も書いたように、担当ディレクターの手腕が冴えているという点では、全12回でピカイチだと、監修者として断言します。それほど、機会費用という概念は説明がむずかしい。でも、経済学のエッセンスの理解には、絶対に必要なのです。

それで、もともとのお題のむずかしさを考えると、今回はすごくよくできているというのが、専門家としての私の評価です。試写をみたときに、本当に感心しました。

なお、担当ディレクターの名前が、ドラマのあるところに出てきます。ちょっと気がつきにくい場所ですが、私はすぐに気がつきました(ディレクターの名前を知っているのだから、自慢するほどのことではありませんが)。

それから、この「機会費用」の回で、バスかタクシーかの話をきちんと理解するためには、前回のキーワードだった「サンクコスト」を理解している必要があります。小山内君がバスを選んだ場合には、小山内君が1時間を無駄にすごすことになり、「会社が小山内君に支払っている1時間ぶんの給料も無駄になる」といった指摘を、郷田先輩がしていました。

でも、番組の解説のところでは、小山内君の給料の話は無視していました。なぜか?

機会費用の概念に忠実に考えれば、この給料の話を無視するのは自然のことなので、理由の説明がなくてもかまわない。ただし、ここで補足して説明しましょう。

正社員の小山内君に対しては、会社はその時間に対する給料を支払うことがすでに決まっています。だから、小山内君がバスを選んでもタクシーを選んでも、1時間ぶんの給料の回収はできないので、会社にとってはサンクコストであり、バスかタクシーかの選択(会社側がタクシーの選択を認めて経費として支払うかどうかの話)では、それを忘れて考えるべきなのです。

サンクコストは、そのあとの選択に関係なく犠牲になっていますから、「何かを選択をしたことで犠牲になった」というものではなく、だから機会費用にはふくまれないということです。

また、後半のドラマで紹介している「居酒屋の激安ランチ」の話は、標準的な経済学のテキストや入門書であれば、「限界費用」の考え方で説明する内容です。拙著『クルマは家電量販店で買え!』をお読みいただいた方は、たぶん気がついたでしょうが、拙著では「レストランのランチ」の話として出てきています。

じつは、番組のドラマ台本は昨年7月の打ち合わせの時点で骨格を議論しました。その時点では、『クルマは家電量販店で買え!』の執筆は始めたばかりでしたから、まだ書く前の本のネタを番組のネタとして提供したわけです。

とはいえ、当初は「限界費用」で説明することを前提にしていましたので、それも「機会費用」で説明するというやり方に変えたのが、結果としてうまくいった感じです。

ちなみに、本(番組テキスト)のほうでは、先に居酒屋の激安ランチを機会費用で説明し、あとの「吉本のワンポイント経済学」で似た例を取り上げて、それを限界費用で説明するという二段構えにしてあります。

とにかく、この番組の、1回につきひとつのキーワードという構成は、それぞれのキーワードを確実に記憶・定着させるという意味で、すごくよかったと思います。

次回は『比較優位』。

重要だけど、慣れないと理解しにくい概念が続きます。表が説明のポイントになりますから、その部分だけは集中力をもってみてください。

また、今回の「機会費用」の考え方が前提になりますので、1週間後までよく覚えておいてください。

よろしくお願いします。

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2009年1月11日 (日)

「出社が楽しい経済学」の放送『第1回 サンクコスト』監修者の言い訳

ついに放送開始です。初回の放送までの1週間ぐらいは、かなり緊張しました。

事情があって、編集段階の番組をDVDでもらい、それを観て作業をしていて、月曜か火曜に、内容とは関係ない細かな誤りに気がつきました。それは修正してもらったのですが、「いろいろまちがいが残っているのでは?」との不安が生じて……

まあ、第1回はもう放送されちゃいましたから、修正できないと思えば、開き直れます。

12回で、1回にひとつのキーワード。番組制作の最初の段階で、12個のキーワードを選びましたが、私もNHKの制作スタッフもかなり悩みました。

番組を観ていただくとわかりますが、1回に2つのドラマを入れていますから、最初は1回に2つのキーワード、主と副のキーワードを用意するという考え方もありました。

最終的に12個のキーワードが決まったとき、順番は、第1回が「価格差別」と決めていたのですが、ドラマの台本などができてきたところで、とにかく初回に一番おもしろい話を持ってくるということになったようで、「サンクコスト」から始まることになりました。

ただし、実際にドラマを収録したあとでの評価では、もっとおもしろくできていると制作スタッフが思っている回があります。それがどれかは、まだ秘密です。

最初の段階では、「サンクコスト」の話をきちんと説明するには、コスト(費用)について、固定費用と変動費用を分けるなどの説明もすべきだという話がありました。当初は、もっとずっとむずかしい内容も入れようとしていたわけです。

結局、すごく基本的なことに絞って説明することになって、それがうまくいっているという印象です。SETの実力派俳優・女優のみなさんの演技が光っていますよね。

完成版は始めてみましたが、試写版とのちがいがいろいろあっておもしろかったです。

後半のドラマで、シークレットシューズの開発を回想するシーンは、明らかに「プロジェクトX」を意識していて、試写版では、中島みゆきさんのあの曲がBGMで流れていました。「そこまでやっていいのか?」と思っていましたが、さすがに曲を変えたようです。

私が話をしている部分は、もっと長い分数を話していたのですが、編集で一部カットされています。本人からすれば、もっと削ってもらってもいいのですが、それなら最初から短い収録で済ませてほしかった。

また、小さなかわいい子供が出てくるシーンがありましたが、担当ディレクターのお子さんとのこと。子供はサンクコストにとらわれないという内容でしたが、確かに、うちの子供をみていても、過去の出費や労力がムダになってもまったく気にしない様子です。

ちなみに、ドラマに出てきたシークレットシューズとシークレットかつらですが、NHKのスタッフルームで現物をみました。シューズのほうは、けっこう軽かったので驚きました。

さて、番組テキストは、通常のNHKの番組テキストとは異なる形で出版されています。完全に独立した単行本として出版していて、それがなくても番組は観ることができるし、番組を観なくて本だけ読んでもいい。そういったコンセプトでつくりました。

ふつうなら、番組テキストを単行本化することがあっても、それは放送終了からしばらくしてなのですが、今回は、最初から単行本で、なおかつ、番組放送開始に合わせて出版しました。

事前に、12月下旬発売の情報が出ていましたが、事情を説明すると、もともと、私とNHKスタッフとNHK出版とが夏に打ち合わせをして、1月の番組第1回放送日の直後に出版することに決めて、作業にかかりました。再放送もありますから、第1回の放送後に本が出て、それを読んだ人が第1回を観ようと思ったとして、再放送には間に合う可能性があるということでした。

だから、当初は、第1回の放送前に本が出る予定ではなかった。それなのに、NHK出版が勝手に予定を変更して、12月出版にしたので、大変だったわけです。しかも、NHK出版が編集作業を依頼した相手にはその前倒しの予定をこなす技能がなかったため、ぎりぎりのスケジュールの中で、本来は私やNHKスタッフの担当ではない作業も、ほとんど私たちがやり直すことになった。

それで、こちらは12月出版に間に合うように作業したのですが、NHK出版や編集作業をしている人たちの不手際がさらに続いたため、初回放送日の110日に合わせて出版となりました。

NHK出版の自作自演と言っていいドタバタで、12月に前倒ししたあと、1月に戻ったという、何とも人騒がせな話で、あまりにお粗末な仕事しかできない人たちに振り回された私は、ただ疲れただけでした。

もし、番組の続編(第2シリーズ)の制作があって、そのときも私が専門家として手伝う場合には、テキストの原稿はもっと早く用意して、別のやり方で出版できるよう交渉したいと思っています。

次回は『機会費用』。

当初は「限界費用」と「機会費用」の2つを説明するつもりでしたが、限界費用はやはりむずかしいので、限界費用の重要性がわかる話も機会費用の概念を使って説明しています。

地味なキーワードの回ですが、重要だけど説明しにくいとされている機会費用の話を、すごくうまく説明していて、試写のときにとても感心した記憶があります。予想以上の仕上がりで、私の印象では、担当ディレクターの手腕が最も際だっている回です。

なお、第1回を見逃した人、もう一度みたい人は、第1回だけはNHK総合テレビでの再放送がありますので、ぜひご覧ください。

総合テレビでの再放送:2009年1月16日(金)24:1024:45

教育テレビでの再放送:2009年1月14日(水)24:4525:17

もちろん、第2回以降もよろしくお願いします。

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